きっと消えない秋のせい
「僕たちが――考人たちがあの事故で入院していた病院の院長」
「院長って?」
「……あの病院の中では一番偉い人」

うわああああああああ!!
なにそれ!!
そんなにすごい人が、あの事故の真実を口止めしていたの。
すると、朔夜くんはさらにとんでもないことを言い出した。

「僕やあすかみのり先生の家族に、あの事故の真実を伝えたのは院長さんなんだ……」
「ええっ!」
「でも、考人や天宮さんたちの家族には伝えていないと思う」

はああああっ!!
朔夜くんたちの家族には、あの事故の真実を伝えているけど、考人たちの家族には伝えていないの。

ど、どういうこと?

だけど、朔夜くんは更なる衝撃な事実を口にした。

「杏、ずっと隠しごとをしていてごめん。僕がいつも一人でこっそりと会っていたのは僕の父さんと母さんなんだ……」
「ええええっ!!」

あまりに突然で頭が混乱していた。

――だって、だって!
あたしの予想と完全に違っていたんだもん!!
朔夜くんはたまに、一人でふらりとどこかに出かけてしまうことがあったんだよね。
あたしはてっきり、あの事故の『真実』を口止めしていた人――院長さんのもとに行っていたとばかり思っていた。
でも、実際は朔夜くんのお父さんとお母さんに会いに行っていたわけで。

「何か、全てが突然すぎて理解が追いつかないよー!!」
「……杏、まずは落ち着いて」
「……う、うん」

頭が大混乱を起こしていたので、その言葉にぎくりとする。
ああああ、ドキドキでどうにかなりそう!
頭の中で必死に整理していると、一つ確実なことを思いつく。
それは院長さんが、朔夜くんたちを生き返させた人じゃないかな、ってこと。

「ねえ、朔夜くん。院長さんが、朔夜くんたちを生き返させた人じゃないかな?」

ふと思いついたことを言ってみる。
思わぬ言葉に朔夜くんの顔が驚きに染まった。

「僕も分からない。でも、その可能性はある……と思う」

何かを思い出しながら、朔夜くんは言った。

「僕たちの知らないことも知ってるような感じがしたから」

朔夜くんがあたしをじっと見つめた。
その途端、どくん、と胸が音を立てる。期待がどんどん膨らんでいく。

ああ、そっか。

ふと気づいた。
もし、院長さんが、朔夜くんたちを生き返させた人なら、結菜を生き返させることもできるかもしれないと思ったんだ。
だって、あたしは本物の結菜にもう一度、会いたいから。
だから、結菜を助ける方法をずっと探していたのかもしれない。
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