きっと消えない秋のせい
「それなら……もしかしたらもしかすると、院長さんの力なら、結菜を生き返させることができるんじゃないかな」

気がついたら、胸の奥にたまっていたものを吐き出していた。
院長さんがやったことを考えたら、すごく胸がざわざわしたけど。

「あたし、絶対に結菜を救いたい。もう一度、結菜に会いたい。会って、いっぱいいっぱい話をしたいよ!」

あたしの気持ちは止まらない。
走り出した想いは行きつくところまで行きつくしかないもん。
それがたとえ、どこにたどり着こうとも。

「杏らしいね。僕と考人も、杏のお願いごとがかなうように協力する……。今度は、僕たちが杏の想いを守りたいから」
「……うん。朔夜くん、考人、ありがとう」

その言葉に、胸が熱くなる。
温かい。
心の奥に小さな温かいものが生まれたみたいに。
その時――。

「おう! 杏のお願いごと、俺たちに任せておけ!」

朔夜くんはどん、と胸を叩く。
まぶしい表情、まるで日だまりみたいな変わりように。
考人……そんな言葉が思わず、口からこぼれそうになったんだ。

「院長さんがたとえ、どんなにすげえ奴だとしてもさ。俺たちが力を合わせれば、絶対に負けねーからな!」

朔夜くんの目はきらきらしていて、まるで考人みたい。
あたしが呆然としていると、やがて朔夜くんは少し恥ずかしそうにうつむいた。

「……って、その、考人も思っているから」
「……うっ……うん……」

ゆらゆらと視界が揺れる。
本当に……朔夜くんは考人と繋がっているんだ。
そう思った途端、身体の底から湧き上がるように涙が出て止まらなかった。
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