きっと消えない秋のせい
「……なに? また、勝手に僕の部屋に行くなよ」
あたしの視線に気づいたんだろう。
考人の口からあっけらかんと悪気なく放たれたその言葉に、なんとも言えないやるせない感情が渦巻く。
「杏ちゃん、いつも来てくれてありがとう。考人が変わってから、何だか家の中が暗くなってしまってね。でも、杏ちゃんが来てくれると、考人が以前の時のように明るい感じがして嬉しいのよ」
「あたしも、考人が一緒にいると嬉しくなるんです。これからも来てもいいですか?」
「遠慮しないで、いつでも来てね」
あたしの言葉に、考人のお母さんが笑ってそう言った。
あたしは考人のお母さんとしばらく話をしていたけど。
考人が会話に入ってくることはなかった。
「じゃあ、杏ちゃん、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
考人のお母さんはそのまま台所に向かう。
考人も二階に上がろうとするけど。
すかさず、あたしは考人の腕をつかんだ。
「よし、考人、行くよ」
本当は二階へ上がらせてもらいたかったけど。
先手を打たれたので、仕方なくあたしは考人と一緒にリビングへと向かう。
「ふわふわ!」
リビングに入ると、近くのふわふわソファーに座った。
すると、考人はあたしから離れたところに腰をおろす。
あたしと考人の間にできた距離。
それは、今のあたしと考人の間にできた距離でもあったんだ。
だって、『今の考人』は『以前の考人』とだいぶ違っていたから。
いつも自分のこと、『俺』って言っていたのに、今では『僕』。
あの、底抜けに明るかった性格はどこに行ったんだろう。
その思うくらい素っ気ないし、塩対応。
それに勉強が苦手だったはずなのに、今では学年一、頭がいい。
以前、赤点だらけで先生に叱られていた考人の姿が懐かしい。
もしかして、入院生活をしていた時に、ずっと勉強でもしていたんだろうか。
ほんとに謎だ。
「…………」
実際、スマホをいじっている考人は、以前の考人とは別人のような顔を見せてくる。
険しい顔は真剣そのもので、以前の考人とのギャップに戸惑うばかり。
ソファーに座っている今も、その姿に翻弄されているような気分だ。
ねえ。考人は今、あたしのことをどう思っている?
もしかして、頻繁に家に来ていることを怒っている?
あたしの胸の中で様々な想いが駆け巡る。
黙っている考人が今、どう思っているのかが知りたくて堪らなかった。
でも、考人と目が合った瞬間、すぐに逸らされてしまう。
ぐっ……。
性格が変わった?
そんなことでへこたれない。
だって、あたしは考人のことが大好きだから。
「それに、あたしたちはいつだって、おしどり夫婦だから」
あたしは小さな声で何度も言い聞かせた決心をつぶやく。
胸に生まれた予感はきっと事実。
この想いはきっと幸せの色をしている。
だから、現実なんかに絶対に負けない。
あたしの視線に気づいたんだろう。
考人の口からあっけらかんと悪気なく放たれたその言葉に、なんとも言えないやるせない感情が渦巻く。
「杏ちゃん、いつも来てくれてありがとう。考人が変わってから、何だか家の中が暗くなってしまってね。でも、杏ちゃんが来てくれると、考人が以前の時のように明るい感じがして嬉しいのよ」
「あたしも、考人が一緒にいると嬉しくなるんです。これからも来てもいいですか?」
「遠慮しないで、いつでも来てね」
あたしの言葉に、考人のお母さんが笑ってそう言った。
あたしは考人のお母さんとしばらく話をしていたけど。
考人が会話に入ってくることはなかった。
「じゃあ、杏ちゃん、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
考人のお母さんはそのまま台所に向かう。
考人も二階に上がろうとするけど。
すかさず、あたしは考人の腕をつかんだ。
「よし、考人、行くよ」
本当は二階へ上がらせてもらいたかったけど。
先手を打たれたので、仕方なくあたしは考人と一緒にリビングへと向かう。
「ふわふわ!」
リビングに入ると、近くのふわふわソファーに座った。
すると、考人はあたしから離れたところに腰をおろす。
あたしと考人の間にできた距離。
それは、今のあたしと考人の間にできた距離でもあったんだ。
だって、『今の考人』は『以前の考人』とだいぶ違っていたから。
いつも自分のこと、『俺』って言っていたのに、今では『僕』。
あの、底抜けに明るかった性格はどこに行ったんだろう。
その思うくらい素っ気ないし、塩対応。
それに勉強が苦手だったはずなのに、今では学年一、頭がいい。
以前、赤点だらけで先生に叱られていた考人の姿が懐かしい。
もしかして、入院生活をしていた時に、ずっと勉強でもしていたんだろうか。
ほんとに謎だ。
「…………」
実際、スマホをいじっている考人は、以前の考人とは別人のような顔を見せてくる。
険しい顔は真剣そのもので、以前の考人とのギャップに戸惑うばかり。
ソファーに座っている今も、その姿に翻弄されているような気分だ。
ねえ。考人は今、あたしのことをどう思っている?
もしかして、頻繁に家に来ていることを怒っている?
あたしの胸の中で様々な想いが駆け巡る。
黙っている考人が今、どう思っているのかが知りたくて堪らなかった。
でも、考人と目が合った瞬間、すぐに逸らされてしまう。
ぐっ……。
性格が変わった?
そんなことでへこたれない。
だって、あたしは考人のことが大好きだから。
「それに、あたしたちはいつだって、おしどり夫婦だから」
あたしは小さな声で何度も言い聞かせた決心をつぶやく。
胸に生まれた予感はきっと事実。
この想いはきっと幸せの色をしている。
だから、現実なんかに絶対に負けない。