きっと消えない秋のせい
『関係者以外立入禁止』

まあ、そうなるよね。
当たり前だけど、院長室に続いているはずの通路のドアも閉まっている。
お願いごとをすれば、きっとドアを開けてもらえるけど。
あたしのお願いごとじゃ、近くにいる人たちしかお願いを聞いてもらえないなあ。
うーん。関係者以外立入禁止の場所だから。
きっとバレてしまったら、とんでもない騒ぎになってしまう。
だってお願いごとをしても、ごまかしようがない場所なんだもん。

「……杏、ここから先は慎重に行こう」
「うん」

朔夜くんは人差し指を立てて、静かに言う。
はああっ!! これって秘密のミッション!!
心臓が激しくドキドキとした。

「このドアを開ける方法を知っている人、この近くにいるかな?」

きょろきょろと見渡すと、看護師さんたちが大慌てでこちらに駆け寄ってきた。

『忙しい時にごめんなさいー!! お願い!! このドアを開けて!!』

あたしは目をつぶり、心の中で強く強く願う。
すると、看護師さんの一人がカードキーでドアを開けてくれたんだ。

「どうぞ」
「ありがとうございます!」

開けてくれたのは看護師長さん。看護師さんの中で一番すごい人らしい。
それから先も気づかれないように。
ときおり、お願いごとに頼りながら。
あたしたちは必死に院長室を目指したんだ。
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