きっと消えない秋のせい
「ね、考人、朔夜くん!」
「おう、当然だぜー!」

朔夜くんはそう言ってこぶしを握りしめる。
あたしの不安を打ち消すみたいに。
朔夜くんは今までで一番嬉しそうな顔を見せてくれたんだ。
それは太陽のような考人の顔。

「あのね、あのね。あたし、考人のこと、大好きだから!」
「俺も、杏のことが大好きだー!」

幼い頃から何回も言われてきたその言葉がすごく染み込んでくる。
ふんわりと温かくて、じわっと涙がにじんだ。

「だからさ、杏、こんな奴に負けるなよ!」
「うん! 負けないよ、考人!」

あたしがうなずくと、朔夜くんは手を上げる。
バチンとハイタッチすると、心まで軽くなるような気がした。
考人はすごいな。
その笑顔で、一瞬で幸せにすることができる。

「……杏。僕はたとえ、全てを投げうったとしても、君を守りたかった。君は僕にとって、生きる希望だったから」
「……朔夜くん」

朔夜くんがゆっくりと両手を伸ばした。
この想いを打ち明ければ、きっと誰も幸せにはなれない。
そう思っていたけど。

だったら、朔夜くんに抱いているこの気持ちはなんだろう?
好き以外の名前がついているの?

そんなわけがないもん。
だから、あたしは大きく広げられた腕の中に飛び込む。

「あたし、朔夜くんのことが大好きだよ!」
「僕も、杏のことが大好きだ!」

だからこそ、あたしたちは強く強く惹かれ合う。
願う気持ちは三人一緒。

『『『お願い!!! これからもずっと、一緒にいられますように!!!』』』

そう祈った瞬間。
檻はスーッと消えて、ウサギのぬいぐるみはコテっと倒れてしまった……けど。
その中に淡い青い光のようなものが入っていくのを確かに見たんだ。
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