きっと消えない秋のせい
エピローグ
あの騒ぎから数日後。
「考人。帰ったら、あたしの部屋で宿題……勉強会、しよ!」
「……うん」
賑やかな声が飛び交う放課後の通学路。
あたしたちはいつものように一緒に帰っていた。
段々、気温が下がってきたけど、カラリとした空気が気持ちいい。
檻が消えた後、あたしたちは改めて、死神さんを探したんだけど。
あの病院の院長さん――死神さんはどこにも見当たらなかったんだ。
誰に聞いても居場所を知らないって言うし、どこを探してもいなかったんだよね。
でも、死神さんが姿を消してから、降り続いていた雨がピタリと止み、学校のみんなも元どおりになっていた。
あの事故で起きた現象はそのままだったけど、ようやくいつもどおりの日常が戻ってきたんだ。
「死神さん。あれから姿を見せなくなったけど……。また、あの事故の真実を口止めしようとしてくるのかな」
「そうかもしれない。でも、たとえこの先、どんな困難があっても、僕たちが絶対に杏を守ってみせるから……」
気づかわしげに顔を覗き込んでくる朔夜くん。
彼の優しさに、心がぽかぽかと温かくなる。
うん、大丈夫。死神さんが再び、あたしの記憶を消そうとしてきても。
みんなと一緒なら、きっと乗り越えられるって信じている。
考人の家の前にたどり着くと、朔夜くんは手を差し出してきた。
「杏、すぐに行くから!」
「うん、またね!」
その手に取った瞬間、ぐっとこみ上げてくるものがあった。
だって、考人と朔夜くんはもう、ただの友達じゃない。
あたしにとって、特別な存在。おしどり夫婦だから。
うん……そうだよね!
不安なこともあるけれど。
今は、みんなと一緒に勉強会をめいっぱい楽しまなくちゃ!
「ただいまー!」
玄関のドアを開けて、元気いっぱいに家に飛び込む。
でも、家に入ると、そこには困り顔のお母さんがいたんだ。
「杏、お帰りなさい」
「お母さん、どうしたの?」
あたしはきょとんと首を傾げる。
すると、お母さんはためらいがちに目を伏せた。
「最近、杏の部屋から物音がするのよね。どうしてかしら?」
「えっ!? それって……」
びっくりして、思わず言いかけたあたしは慌てて口を覆った。
すぐにそっと二階を確認してから、お母さんを見る。
「……そ、そうなんだ。不思議だね。あのね、お母さん、今から考人と一緒に勉強会するから」
「あら? そうなの」
「うん」
ごまかすようにうなずいてから、大急ぎで階段をかけ上がる。
そして、部屋のドアを開けると。
「杏ちゃん、お帰りなさい!」
その声と同時に、ウサギのぬいぐるみがぴょこっと顔を出したんだ。
「うわわわわっ!?」
驚いて飛び上がった拍子に、持っていた手提げ袋がぽとりと地面に落ちる。
「考人。帰ったら、あたしの部屋で宿題……勉強会、しよ!」
「……うん」
賑やかな声が飛び交う放課後の通学路。
あたしたちはいつものように一緒に帰っていた。
段々、気温が下がってきたけど、カラリとした空気が気持ちいい。
檻が消えた後、あたしたちは改めて、死神さんを探したんだけど。
あの病院の院長さん――死神さんはどこにも見当たらなかったんだ。
誰に聞いても居場所を知らないって言うし、どこを探してもいなかったんだよね。
でも、死神さんが姿を消してから、降り続いていた雨がピタリと止み、学校のみんなも元どおりになっていた。
あの事故で起きた現象はそのままだったけど、ようやくいつもどおりの日常が戻ってきたんだ。
「死神さん。あれから姿を見せなくなったけど……。また、あの事故の真実を口止めしようとしてくるのかな」
「そうかもしれない。でも、たとえこの先、どんな困難があっても、僕たちが絶対に杏を守ってみせるから……」
気づかわしげに顔を覗き込んでくる朔夜くん。
彼の優しさに、心がぽかぽかと温かくなる。
うん、大丈夫。死神さんが再び、あたしの記憶を消そうとしてきても。
みんなと一緒なら、きっと乗り越えられるって信じている。
考人の家の前にたどり着くと、朔夜くんは手を差し出してきた。
「杏、すぐに行くから!」
「うん、またね!」
その手に取った瞬間、ぐっとこみ上げてくるものがあった。
だって、考人と朔夜くんはもう、ただの友達じゃない。
あたしにとって、特別な存在。おしどり夫婦だから。
うん……そうだよね!
不安なこともあるけれど。
今は、みんなと一緒に勉強会をめいっぱい楽しまなくちゃ!
「ただいまー!」
玄関のドアを開けて、元気いっぱいに家に飛び込む。
でも、家に入ると、そこには困り顔のお母さんがいたんだ。
「杏、お帰りなさい」
「お母さん、どうしたの?」
あたしはきょとんと首を傾げる。
すると、お母さんはためらいがちに目を伏せた。
「最近、杏の部屋から物音がするのよね。どうしてかしら?」
「えっ!? それって……」
びっくりして、思わず言いかけたあたしは慌てて口を覆った。
すぐにそっと二階を確認してから、お母さんを見る。
「……そ、そうなんだ。不思議だね。あのね、お母さん、今から考人と一緒に勉強会するから」
「あら? そうなの」
「うん」
ごまかすようにうなずいてから、大急ぎで階段をかけ上がる。
そして、部屋のドアを開けると。
「杏ちゃん、お帰りなさい!」
その声と同時に、ウサギのぬいぐるみがぴょこっと顔を出したんだ。
「うわわわわっ!?」
驚いて飛び上がった拍子に、持っていた手提げ袋がぽとりと地面に落ちる。