きっと消えない秋のせい
「あのさ、考人」

今日の授業内容やこれからの学校行事。
あたしは当たり障りのない話題を振っていくけど、考人から返ってくるのは無言か、素っ気ない返事だった。

……むっ。こうなったら、仕方がない!
よーし、決めた!!

「考人! これからあたしたちは運命共同体だから!」

突然下されたあたしの宣言に、考人は驚いて目を丸くする。

「は? う、運命共同体……?」
「あたしといつも一緒に行動してってこと。 一緒にいなきゃ、おしどり夫婦じゃないもん」

あたしと考人の視線がかち合う。

「……何を勝手に。僕のことはほっといてくれって……」
「それは絶対にダメ! おしどり夫婦なんだから、考人は妻のあたしの傍にいてほしいの! ね、ね、お願い!」

あたしの言葉を黙って聞いていた考人だったけど。
やがて、考人の頬がゆっくりと赤く染まっていく。

「……杏は相変わらず、強引だな」

そして……考人はすごく楽しそうに笑ったんだ。
その笑顔は以前と同じようにまぶしくて。
でも、あっけらかんとした言い方に、あたしは思わずむっとしてしまう。

「運命共同体って、めちゃくちゃすげえー。つーか、自分で妻とか言うわけ?」
「別にいいでしょ。事実なんだし」
「なんだよ、それ!」

そう、あたしたちはいつもこんなふうだった。 くだらない話でお互いにツッコミを入れたり、笑ったり。
あの日々と同じようにできることが……こんなにも嬉しい。
良かった。性格が変わっても、考人はあたしの知っている考人のままだ。
どうして性格が変わってしまったのかは分からない。
でも、今はこうして自然に笑う考人の姿を見れただけで十分だもん。
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