きっと消えない秋のせい


宿題をなんとか終えた後。
あたしは胸にため込んでいた決意を口をした。

「あたしね、みんなの幸せを諦めたくない。お願いごとで、みんなに幸せを届けたい」
「杏」
「杏ちゃん……」

朔夜くんと結菜はまっすぐにあたしを見つめる。

「でも、あたしのお願いごとの力じゃ、みんなを本当の意味で幸せにすることはできない」

まるで胸にぽっかりと穴があいたような気分。
いろんな思いが浮かんできて、すぐには整理がつかない。
だけど。

「そんなことないぜ! 杏のお願いごとは無敵だからな!」

朔夜くんはそう言ってこぶしを握りしめる。
その言葉はふんわりと優しかった。
温かいな……。
考人に太鼓判押してもらったら、すごく安心する。

「それに、俺たちは杏の傍にいることが一番の幸せだしー」

ふええっ! それって、どういう意味!?
その瞬間、あたしの心臓は壊れそうなほど暴れ出したんだ。

「一番の幸せ……?」

ドキドキの気持ちが抑えられなくて、朔夜くんに顔を向ける。
すると、朔夜くんは真剣な目であたしの顔をのぞきこんできたんだ。

「……僕たちにとって、杏は特別な人ってこと」
「あ……あたしにとっても、考人と朔夜くんは特別な人たちだよ」

指をもじもじ。今のあたしの顔はきっと、めちゃくちゃ真っ赤だ。

「そうだよ、杏ちゃん。わたしたちは杏ちゃんの傍にいるから。これから先もきっと、奇跡は続いていくんだよ」

ちょこんと指を差し出す結菜。

「明日も明後日もその次の日も、天気になーれ!」

おおっ!
「天気になーれ」という言葉に、テンションが上がる。
何だかワクワクしてきたよ!

「あたしたちはこれからもずっと一緒だよ! だから、いつかみんなで夢を叶えようね!」
「うん、約束……!」

その指にあたしと朔夜くんも小指を絡ませる。
将来の夢。そして、これから先の未来。
いろんな心配事も、みんながいれば、きっと大丈夫!
みんなで指切りげんまん。
それは、あたしたちだけの大事なお願いごとだった。

「大切なお願いごとはもう一つ」

あたしはチラっと朔夜くんを見つめる。
特別な人たちへのお願いごとはもちろん。
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