荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
 仮宮は、槙山家が所有する土地に建てられた。

 神社にあった本宮を一回り小さくしたものだった。
 かりそめとはいえ、造りはしっかりとしていて父親もさすがに疎かな仕事はさせなかったのだろう。

 真新しい鳥居の前で宮司が止まった。

「儂はここまでだ。もう時間でな。今の時間、この鳥居を通れることができるのはうさぎだけだ」
「わかりました」

 ここまで導いてくれた宮司の手が離れると、うさぎはごくりと生唾を飲んで、鳥居の前へ進む。

「……うさぎ、おつとめを頼むぞ」
「はい」

 宮司の切なそうな顔が辛い。
 うさぎはたった一人自分を見送ってくれた彼が悔やむことのないよう笑顔を向け、頭を下げると鳥居をくぐった。
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