荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
 うさぎは鏡に映る自分の姿を不思議な気持ちで見つめた。

 白無垢の花嫁衣装に綿帽子。
 そしてうっすらと顔に施された白粉に、唇に塗られた淡い紅。
 こんな質のいい衣装を着るのも、化粧をするのも初めてで、鏡の向こうにいる自分がとても自分に思えないでいた。

「へぇ、まぁまぁじゃない。あんたも着飾ればそれなりね」

 襖が開いた向こうから、うさぎの姉である美月が入ってきた。
 彼女の着物は赤の地色に振り袖で金糸に銀糸で刺繡された扇に桜、流水と華やかな装いである。
 着物に合わせて結い上げた髪も今、流行りだというモダン編みで、頭の片側に重点を置いた大きな大輪の花飾りが目を引く。
 誰よりも上でありたい美月のことだから、花嫁の自分より華やかで派手でいたいのだろう。

 そんなこと、しなくてもいいのにとうさぎは思う。
 婚礼は真夜中で、ひっそりと行う――というより、自分の式には誰も参加しない。

 美月はしゃなりと歩き、うさぎに近づいた。うさぎの足に痛みが走る。
 美月が自分の足を踏み、体重をかけてきたのだ。
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