荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
◆ 結ばれる想い
(ここは不思議な場所だわ)
うさぎ――白花と名前を付けられ、荒神荒日佐彦の妻となって二週間が過ぎた。
『妻』という肩書きは、まだ肌を触れあわせていない白花には不相応だと思うのに、お世話してくれる兎やアカリは、そのように接してくれる。
『自分は仮初めだからと、周囲の者たちにそのように扱ってくれというのは酷だ。それは理解してくれ』
と言う荒日佐彦の願いまで、白花は無下にすることはできない。
白花はアカリを伴って日課になった、仮宮の境内を散策する。
仮宮とその周辺はとても静かで、自分以外の人はいない。
鳥居の前まで来るとたまに村人が覗いているのが朧気に見え、鳥居の向こう側の景色はハッキリしない。
「神界と人間界の境界なんですよ。あちら側からは仮宮が見えるだけで私たちの姿は見えておりません」
アカリが「ほほほ」と笑いながら話してくれた。
神界側に自分はいるというが、景色もさえずる鳥も、時折姿を見せる動物たちも向こう側にいた頃と寸分変わりない。
「不思議ね……。私たちからは見えるのに、向こうは私たちが見えないのね」
「はい。仮宮に入ってきても無人の宮に見えるでしょう。まあ、感の強いお方は『なんかいる』とかぐらいはわかるのではないでしょうか?」
(私も見えないのね)
白花はそれが一番不思議だ。
『こちらから人間界に干渉できるが、向こう側の者たちは俺たちが許可するか、本人に力がない限り干渉できん』
そう荒日佐彦が話してくれたことを思い出す。
つい数日前までは『化け物』と呼ばれ、蔑まれてきた『人』だった。
荒日佐彦神と夫婦の契りを結んだ白花は『神』に近い『人』となったとアカリは言う。
(まだ契りを結んでいない私でも『神』に近い『人』になったのかしら?)
アカリたちを騙しているようで胸が痛む。
自分自身、どこか変わったという箇所なんてない。
自分の手のひらや腕、腰まである揺れる白い髪を撫でる。どこか変わったという部分はない。
『夫の身に受けた瘴気や不浄を祓う役目を担う』力を持っていたのも不思議だし。
(もしかしたらアカリさんは、まだ私が荒日佐彦様と夫婦になっていないということをもう、知っているのかも知れないわね)
自分から話すのも、気恥ずかしい。
白花は新しい自分の名に、徐々に慣れていくように、この生活に慣れ、そして荒日佐彦を夫として受け入れることができればいいなと思う。
けれど――白花はそっと自分の胸に手を当てる。
自分自身に自信が持てないのは、ここに来ても変わらない。
うさぎ――白花と名前を付けられ、荒神荒日佐彦の妻となって二週間が過ぎた。
『妻』という肩書きは、まだ肌を触れあわせていない白花には不相応だと思うのに、お世話してくれる兎やアカリは、そのように接してくれる。
『自分は仮初めだからと、周囲の者たちにそのように扱ってくれというのは酷だ。それは理解してくれ』
と言う荒日佐彦の願いまで、白花は無下にすることはできない。
白花はアカリを伴って日課になった、仮宮の境内を散策する。
仮宮とその周辺はとても静かで、自分以外の人はいない。
鳥居の前まで来るとたまに村人が覗いているのが朧気に見え、鳥居の向こう側の景色はハッキリしない。
「神界と人間界の境界なんですよ。あちら側からは仮宮が見えるだけで私たちの姿は見えておりません」
アカリが「ほほほ」と笑いながら話してくれた。
神界側に自分はいるというが、景色もさえずる鳥も、時折姿を見せる動物たちも向こう側にいた頃と寸分変わりない。
「不思議ね……。私たちからは見えるのに、向こうは私たちが見えないのね」
「はい。仮宮に入ってきても無人の宮に見えるでしょう。まあ、感の強いお方は『なんかいる』とかぐらいはわかるのではないでしょうか?」
(私も見えないのね)
白花はそれが一番不思議だ。
『こちらから人間界に干渉できるが、向こう側の者たちは俺たちが許可するか、本人に力がない限り干渉できん』
そう荒日佐彦が話してくれたことを思い出す。
つい数日前までは『化け物』と呼ばれ、蔑まれてきた『人』だった。
荒日佐彦神と夫婦の契りを結んだ白花は『神』に近い『人』となったとアカリは言う。
(まだ契りを結んでいない私でも『神』に近い『人』になったのかしら?)
アカリたちを騙しているようで胸が痛む。
自分自身、どこか変わったという箇所なんてない。
自分の手のひらや腕、腰まである揺れる白い髪を撫でる。どこか変わったという部分はない。
『夫の身に受けた瘴気や不浄を祓う役目を担う』力を持っていたのも不思議だし。
(もしかしたらアカリさんは、まだ私が荒日佐彦様と夫婦になっていないということをもう、知っているのかも知れないわね)
自分から話すのも、気恥ずかしい。
白花は新しい自分の名に、徐々に慣れていくように、この生活に慣れ、そして荒日佐彦を夫として受け入れることができればいいなと思う。
けれど――白花はそっと自分の胸に手を当てる。
自分自身に自信が持てないのは、ここに来ても変わらない。