荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
「……っ」
 うさぎは歯を食いしばり痛みに耐える。

「あんたの着ている衣装はね、槙山家の家宝の花嫁衣装なのよ。宮家に縁のあるご先祖が嫁いできたときに召した物なの。それ以来袖を通していなかった。だから私がお嫁にいくときに『着たい』とお父様におねだりしていたのに……っ! あんたが着ることになるなんて! ふざけないでよ! 家宝が穢れたでしょう!」
「……ご、ごめんな、さい……」

 うさぎはただ謝るしかできない。謝っても彼女らの手が止まることなどないのに。

「うさぎのくせに! 自分の目と髪をよくごらんなさいよ! 赤い目に白い髪で! 化け物じゃないの! 化け物が槙山家の家宝の着物を着て身内を名乗るんじゃないわ!」
「ごめん、なさい……」

 うさぎは謝り続けた。それが理不尽でも、自分に罪がなくても頭を下げて詫びることしかうさぎにはできない。
 少しでも口答えするものなら、もっと酷い折檻になるから。

 痛みに耐えかねて、とうとううさぎは畳に倒れ込んだ。
 着物の裾がはねて、白い足首が見えたのを幸いにと美月は足首に体重を乗せ、何度も踏んでくる。

「……ぐっ」
 ぐり、と捻られた痛みにうさぎは顔を歪めた。
「ふん……っ」

 満足したのか美月は、うさぎの足首から足を下ろし荒くなった息遣いを整えながら、着物の裾の広がりをすぼめる。
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