荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
体型が男らしいかと聞いてきたのだ――白花は忖度なしに答えた。
「あ、荒日佐彦様は、ご立派な男らしいお体でございます」
と、顔を引き締めて言ったものの、やはり羞恥に顔が真っ赤になる。
「そうか! 白花の目には好ましく見えるのだな。よかった」
とても嬉しそうに言いながら頷くので、不安になる。
「もしかして私、荒日佐彦様が自信をなくすような事を口にしましたか? もし、そうならば、お話しくださいませ」
荒日佐彦の腕の中で白花は顔を上げ、彼の顔を覗く。
少し不安げに彼の眉尻が下がっていて、白花はますます不安に顔を曇らせた。
「そうではない。……ただ、白花は私を嫌ってはいない。毎夜、一つの布団に二人で入り、いつも俺の腕を枕にして眠るそなたを見ている。その姿は俺を怖がってもいないし、嫌がってもいない。……だから、もしや俺のこの体が嫌なのかと。今は雅な線の細い男がもてはやされていると聞いているのでな……」
(――あ)
――自分は、なんて馬鹿なんだろう。
自分は荒神様の贄の花嫁として生まれ、育てられた。
けれど、美月のようによい暮らしを与えられ、愛されて育ったわけじゃない。
栄養の足りない、やせっぽちな体に、学のない頭に成長した。
出来るとしたら、使用人と同じような雑用しかこなせない。
――だから、自分が『贄』でなく『花嫁』として彼の元にきたのだと知ったとき、「相応しくない」と拒否した。でも、そんな自分の態度が、荒日佐彦を不安にさせていたのだ。
「申し訳……ありません。私……荒日佐彦様に誤解をさせてしまって……荒日佐彦様はちっとも悪くないし、嫌なところなんて一つもありません!……私が……私が、痩せっぽちで愚かだから荒日佐彦様の妻に相応しくないと、勝手にいじけて……それを荒日佐彦様は私の気持ちを大事にしてくれて『待つ』と言ってくれたことに甘えてしまったんです」
「……そう、以前も話していたな。でも、俺はずっと言い訳だと思っていたのだ。『瘴気を身に受けてこんな醜い体になる神など嫌だろう』『いや、今世の女子の好みではないのかもしれない』などと。……互いに、いじけてしまっていたようだ」
自分を抱きしめる腕の力が、ゆっくりと籠もる。
白花は、自ら動いて彼の胸に顔を埋める。
一瞬、腕が驚いたように止まったが、すぐに動き、白花の頭を撫でる。
「俺の気持ちは、最初に会ったときと変わらんよ。いや、ますますそなたが愛しいと思う」
「荒日佐彦様」
「白花の煩いも、いずれ消えてしまうだろう。我らの時は長い。果てなく続く時間の中でそなたは沢山の経験を積み、知識という力を蓄えていくだろう。――神界に住み、神々しく輝くであろう。そんな白花の傍にはいつも俺がいて、支え合うのだ」
「……はい」
睫毛が濡れて、頬に雫が落ちていく。
「そなたの白い髪も、赤い瞳も好きだ」
「はい。私も、身をもって瘴気を吸い取った荒日佐彦様の体も、今のお姿も好きです。お慕いしております」
「白花……」
「はい、荒日佐彦様……」
腕が離れ、白花は荒日佐彦を見上げる。
すぐ目と鼻の先に見える、美神の姿の彼。
瑠璃色の瞳は、こんなにも熱い想いを抱いて真っ直ぐに自分を見つめているというのに。勝手に思いわずらいをして。
彼の薄く整った唇が近付いてきて、白花はそっと瞼を閉じた。
熱い眼差しと同じように、熱の籠もった口づけに白花は酔いしれた。
――その日、ようやく二人は夫婦になった。
「あ、荒日佐彦様は、ご立派な男らしいお体でございます」
と、顔を引き締めて言ったものの、やはり羞恥に顔が真っ赤になる。
「そうか! 白花の目には好ましく見えるのだな。よかった」
とても嬉しそうに言いながら頷くので、不安になる。
「もしかして私、荒日佐彦様が自信をなくすような事を口にしましたか? もし、そうならば、お話しくださいませ」
荒日佐彦の腕の中で白花は顔を上げ、彼の顔を覗く。
少し不安げに彼の眉尻が下がっていて、白花はますます不安に顔を曇らせた。
「そうではない。……ただ、白花は私を嫌ってはいない。毎夜、一つの布団に二人で入り、いつも俺の腕を枕にして眠るそなたを見ている。その姿は俺を怖がってもいないし、嫌がってもいない。……だから、もしや俺のこの体が嫌なのかと。今は雅な線の細い男がもてはやされていると聞いているのでな……」
(――あ)
――自分は、なんて馬鹿なんだろう。
自分は荒神様の贄の花嫁として生まれ、育てられた。
けれど、美月のようによい暮らしを与えられ、愛されて育ったわけじゃない。
栄養の足りない、やせっぽちな体に、学のない頭に成長した。
出来るとしたら、使用人と同じような雑用しかこなせない。
――だから、自分が『贄』でなく『花嫁』として彼の元にきたのだと知ったとき、「相応しくない」と拒否した。でも、そんな自分の態度が、荒日佐彦を不安にさせていたのだ。
「申し訳……ありません。私……荒日佐彦様に誤解をさせてしまって……荒日佐彦様はちっとも悪くないし、嫌なところなんて一つもありません!……私が……私が、痩せっぽちで愚かだから荒日佐彦様の妻に相応しくないと、勝手にいじけて……それを荒日佐彦様は私の気持ちを大事にしてくれて『待つ』と言ってくれたことに甘えてしまったんです」
「……そう、以前も話していたな。でも、俺はずっと言い訳だと思っていたのだ。『瘴気を身に受けてこんな醜い体になる神など嫌だろう』『いや、今世の女子の好みではないのかもしれない』などと。……互いに、いじけてしまっていたようだ」
自分を抱きしめる腕の力が、ゆっくりと籠もる。
白花は、自ら動いて彼の胸に顔を埋める。
一瞬、腕が驚いたように止まったが、すぐに動き、白花の頭を撫でる。
「俺の気持ちは、最初に会ったときと変わらんよ。いや、ますますそなたが愛しいと思う」
「荒日佐彦様」
「白花の煩いも、いずれ消えてしまうだろう。我らの時は長い。果てなく続く時間の中でそなたは沢山の経験を積み、知識という力を蓄えていくだろう。――神界に住み、神々しく輝くであろう。そんな白花の傍にはいつも俺がいて、支え合うのだ」
「……はい」
睫毛が濡れて、頬に雫が落ちていく。
「そなたの白い髪も、赤い瞳も好きだ」
「はい。私も、身をもって瘴気を吸い取った荒日佐彦様の体も、今のお姿も好きです。お慕いしております」
「白花……」
「はい、荒日佐彦様……」
腕が離れ、白花は荒日佐彦を見上げる。
すぐ目と鼻の先に見える、美神の姿の彼。
瑠璃色の瞳は、こんなにも熱い想いを抱いて真っ直ぐに自分を見つめているというのに。勝手に思いわずらいをして。
彼の薄く整った唇が近付いてきて、白花はそっと瞼を閉じた。
熱い眼差しと同じように、熱の籠もった口づけに白花は酔いしれた。
――その日、ようやく二人は夫婦になった。