荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
「瓜実の輪郭に絹のような肌。そして赤珊瑚のような瞳は、まこと至高の宝石のようだ。お前の髪は丁寧に精錬した絹糸のように輝いている。何より俺を魅了して離さないのは、何度も哀しい目に遭っても清廉とした心をこわさなかった白花の生き様だ」
「そ、そんな、あの……褒めすぎです!」
白花は顔を真っ赤にし、両手で顔を隠した。
荒日佐彦はことあるごとに白花を褒めるし、神使たちに自慢する。
こういうとき、褒められることも自慢されることも慣れていない白花は、恥ずかしさに消えてしまいたくなる。
「そんなに褒めないでください。恥ずかしいです」
と懇願したことがあったが荒日佐彦が、この世の終わりだというような絶望的な顔をしたので、それ以上言えなくなってしまった白花だった。
自分の全てを肯定して受け入れてくれる荒日佐彦。
そしてアカリに神使の兎たち。
この世界で白花は受けてきた心の傷を癒やしている。
そう過ごしていくうちに、不思議と考え方が前向きになっていく。
存在を認められるという幸せ。
愛される幸せ。
そして愛する幸せ。
「……そうですね。頂けたら、是非着てみたいわ」
「そうしましょう、そうしましょう」
同意したアカリが、正座のままピョンピョン跳ねる。
その様子に白花は、はにかむように笑う。
二人の姿を見守る荒日佐彦の眼差し。
幸せだ――このままこの時を過ごせたらと白花は思う。
「さて」
と、徐に荒日佐彦が声を上げ、ゆるりと立ち上がった。
「村とその付近の地域の見回りをしてくる。……どうも騒がしい」
「白花様が嫁入りのあとは、ここ一帯は穏やかで静かでしたのに、どこからか『厄』がきましたか?」
とアカリ。
「『厄』が……?」
白花が尋ねる。
荒日佐彦に以前話していた『厄災』
この地に降りかかる不幸な出来事のことを総じて『厄災』と呼んでいる。
厳密にわけて言えば、
『厄』は「わざわい」と呼び、人々が持つ生まれながらの業が引き起こす苦しみのこと。
『災』も「わざわい」と読めるが「さい」と読んでいる。自然が地上や人々に起こす悪い出来事。
『厄』ということは人が引き起こしているということになる。
「村人たちに何かあったのでしょうか?」
「いや、それはまだわからん。『禍』になる前に俺の体にこびりつけばいいのだ」
「お気を付けて」
白花も立ち上がり、出入り口までついていく。
「すまぬが『厄災』が俺の身に付いたらまた浄化してくれ」
「勿論です」
どちらともなく、唇を重ね合う。
「では行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
荒日佐彦の笑顔を見送った白花は、彼の様子を見て安堵した。
――そんな酷い『厄』ではないのだろう、と。
「そ、そんな、あの……褒めすぎです!」
白花は顔を真っ赤にし、両手で顔を隠した。
荒日佐彦はことあるごとに白花を褒めるし、神使たちに自慢する。
こういうとき、褒められることも自慢されることも慣れていない白花は、恥ずかしさに消えてしまいたくなる。
「そんなに褒めないでください。恥ずかしいです」
と懇願したことがあったが荒日佐彦が、この世の終わりだというような絶望的な顔をしたので、それ以上言えなくなってしまった白花だった。
自分の全てを肯定して受け入れてくれる荒日佐彦。
そしてアカリに神使の兎たち。
この世界で白花は受けてきた心の傷を癒やしている。
そう過ごしていくうちに、不思議と考え方が前向きになっていく。
存在を認められるという幸せ。
愛される幸せ。
そして愛する幸せ。
「……そうですね。頂けたら、是非着てみたいわ」
「そうしましょう、そうしましょう」
同意したアカリが、正座のままピョンピョン跳ねる。
その様子に白花は、はにかむように笑う。
二人の姿を見守る荒日佐彦の眼差し。
幸せだ――このままこの時を過ごせたらと白花は思う。
「さて」
と、徐に荒日佐彦が声を上げ、ゆるりと立ち上がった。
「村とその付近の地域の見回りをしてくる。……どうも騒がしい」
「白花様が嫁入りのあとは、ここ一帯は穏やかで静かでしたのに、どこからか『厄』がきましたか?」
とアカリ。
「『厄』が……?」
白花が尋ねる。
荒日佐彦に以前話していた『厄災』
この地に降りかかる不幸な出来事のことを総じて『厄災』と呼んでいる。
厳密にわけて言えば、
『厄』は「わざわい」と呼び、人々が持つ生まれながらの業が引き起こす苦しみのこと。
『災』も「わざわい」と読めるが「さい」と読んでいる。自然が地上や人々に起こす悪い出来事。
『厄』ということは人が引き起こしているということになる。
「村人たちに何かあったのでしょうか?」
「いや、それはまだわからん。『禍』になる前に俺の体にこびりつけばいいのだ」
「お気を付けて」
白花も立ち上がり、出入り口までついていく。
「すまぬが『厄災』が俺の身に付いたらまた浄化してくれ」
「勿論です」
どちらともなく、唇を重ね合う。
「では行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
荒日佐彦の笑顔を見送った白花は、彼の様子を見て安堵した。
――そんな酷い『厄』ではないのだろう、と。