荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
――違います!
突然、頭の中から声が響き驚いて辺りを見渡す。
――白花様! どうして白花、と荒日佐彦様がお付けになったのか思い出して!
「……アカリ?」
大床にアカリがいる。必死になって自分に向かって叫んでいる。
その周りには神使の兎たちがいる。
ああ、私を助けようとして集まってくれたんだわ。
でも、結界で出ては行けないのね。
――白花様は、荒日佐彦様の立派な妻です! どうか自分を誇りに思ってください!
「荒日佐彦様……」
――お前にぴったりな名前だ。白花。
白く清らかな、俺の美しい一輪の花――
愛されている。
昔の、誰にも必要とされていなくて小さくなって、泣いてばかりの私じゃない!
白花は足に力を籠め、立ち上がる。
「……化け物じゃない」
「あっ?」
「私の名前は白花。御祭神である荒日佐彦様にそう名付けられました。それに、この髪も目も母の一族に現れるもの。決して化け物として生まれたわけではありません!」
真っ直ぐに美月を、義母を見つめる。
そう、自分は荒日佐彦様の妻だ。
愛してくれる彼のために、そして自分のために、強くならなくては!
「……な、何よ……っ、荒日佐彦? あんた虐められすぎて頭、おかしくなったんでしょ? 神様が見えるとか妻になったとか、馬鹿じゃない?」
「美月には視えないだけよ」
白花の言葉に美月はカッとして、また右手を振りかざした――その時だった。
「美月! 何をしている!」
怒りを含んだ声に美月の手が止まった。
義母は怒鳴り込んできた相手を見て途端、震えだす。
駆け足でやってきたのは、勇と慶悟だった。
「勇さん、慶悟様……こ、これはその……あ、あの人は? どうしたのかしら?」
義母が慌てて話題を逸らそうとする。
『あの人』――父だろうと容易に予想できる。
「父さんはあとからやってくる。私たちは駆け足できたんだ。……これは一体どういうことなんです? 母さん」
傷ついている禰宜と巫女。気を失って倒れている宮司の怪我を見て、母にキツく問いかける。
そして――砂埃を被っても尚も美しい白髪赤目の女性を見て、大きく目を開いた。
「……お前は!? 何故、こんなところに?」
白花は埃を叩き居住まいを正すと、勇と慶悟に対し頭を下げる。
「おひさしゅうございます。私が出ないと宮司様を殺しかねない様子でしたので、姿を現したまでです」
何? と勇は唸ると、胡乱の目で美月と母を見つめた。
「違います! 私と母は宮司の悪行を問い詰めていただけです! 本当よ! 慶悟様!」
真っ先に言い訳して、慶悟にすがりついたのは美月だった。
今まで鬼の顔だったのに、可憐な表情で涙まで浮かべはじめた。
「一年前に宮司は私の妹に恋慕して遷宮の際に『神の贄』が必要と隠してしまいました。それから妹を想い憂いてましたが、私はまもなく貴方の元へ嫁ぎます。だから明日遷宮を行う今が妹を取り返す絶好の機会だと母と相談して、行動を起こしたのです」
「へぇ。じゃあこの娘は勇と美月の妹ってこと?」
軽い口調で話してきたのは、いかにも品のいい好青年だった。彼が美月の婚約者である鷹司慶悟らしい。
突然、頭の中から声が響き驚いて辺りを見渡す。
――白花様! どうして白花、と荒日佐彦様がお付けになったのか思い出して!
「……アカリ?」
大床にアカリがいる。必死になって自分に向かって叫んでいる。
その周りには神使の兎たちがいる。
ああ、私を助けようとして集まってくれたんだわ。
でも、結界で出ては行けないのね。
――白花様は、荒日佐彦様の立派な妻です! どうか自分を誇りに思ってください!
「荒日佐彦様……」
――お前にぴったりな名前だ。白花。
白く清らかな、俺の美しい一輪の花――
愛されている。
昔の、誰にも必要とされていなくて小さくなって、泣いてばかりの私じゃない!
白花は足に力を籠め、立ち上がる。
「……化け物じゃない」
「あっ?」
「私の名前は白花。御祭神である荒日佐彦様にそう名付けられました。それに、この髪も目も母の一族に現れるもの。決して化け物として生まれたわけではありません!」
真っ直ぐに美月を、義母を見つめる。
そう、自分は荒日佐彦様の妻だ。
愛してくれる彼のために、そして自分のために、強くならなくては!
「……な、何よ……っ、荒日佐彦? あんた虐められすぎて頭、おかしくなったんでしょ? 神様が見えるとか妻になったとか、馬鹿じゃない?」
「美月には視えないだけよ」
白花の言葉に美月はカッとして、また右手を振りかざした――その時だった。
「美月! 何をしている!」
怒りを含んだ声に美月の手が止まった。
義母は怒鳴り込んできた相手を見て途端、震えだす。
駆け足でやってきたのは、勇と慶悟だった。
「勇さん、慶悟様……こ、これはその……あ、あの人は? どうしたのかしら?」
義母が慌てて話題を逸らそうとする。
『あの人』――父だろうと容易に予想できる。
「父さんはあとからやってくる。私たちは駆け足できたんだ。……これは一体どういうことなんです? 母さん」
傷ついている禰宜と巫女。気を失って倒れている宮司の怪我を見て、母にキツく問いかける。
そして――砂埃を被っても尚も美しい白髪赤目の女性を見て、大きく目を開いた。
「……お前は!? 何故、こんなところに?」
白花は埃を叩き居住まいを正すと、勇と慶悟に対し頭を下げる。
「おひさしゅうございます。私が出ないと宮司様を殺しかねない様子でしたので、姿を現したまでです」
何? と勇は唸ると、胡乱の目で美月と母を見つめた。
「違います! 私と母は宮司の悪行を問い詰めていただけです! 本当よ! 慶悟様!」
真っ先に言い訳して、慶悟にすがりついたのは美月だった。
今まで鬼の顔だったのに、可憐な表情で涙まで浮かべはじめた。
「一年前に宮司は私の妹に恋慕して遷宮の際に『神の贄』が必要と隠してしまいました。それから妹を想い憂いてましたが、私はまもなく貴方の元へ嫁ぎます。だから明日遷宮を行う今が妹を取り返す絶好の機会だと母と相談して、行動を起こしたのです」
「へぇ。じゃあこの娘は勇と美月の妹ってこと?」
軽い口調で話してきたのは、いかにも品のいい好青年だった。彼が美月の婚約者である鷹司慶悟らしい。