荒神の贄になりましたが花嫁として溺愛されています~『化け物白うさぎ』と呼ばれた乙女は神の最愛になる
 うさぎだけでなく美月も驚いたのか、目を大きく開き、動揺している。

「お父様? どういうこと? 聞いてないわ!」
「何を言っているのだ。我が槙山家はそうして富みを保ってきたのだ。『花嫁』を快く差し出すことは、我が一族の繁栄に関わることだ」
「私はいかないから! 慶悟様と婚約するのに! だって、それって『贄』ってことでしょう? 死んじゃうじゃない! 絶対に嫌よ! しかも『神と名乗るがその姿は物の怪』って言い伝えにあるわ!そんな神を奉るのもどうかと思うわ!」

 ――そう、不謹慎な呼び名は『物の怪』

 見た者によれば、その姿は『神』とは思えない、どちらかといえば『物の怪』のように醜いという。
 陰で『物の怪神』と呼んでいる者は多く、美月もその一人だった。

「口を慎め、美月。姿がどうであれ、槙山家が代々奉る御祭神であり屋敷神だ。それで我ら一族は栄えてきたのだ」

 勇にたしなめられ、美月は半泣きになって親指を噛む。自分が『贄』になんて冗談じゃないとでもいうように。

――しかし、ハッと思い出したように部屋の隅に俯いて控えているもう一人の『家族』を思い出した。

「……そうだわ、適してる子がいるじゃない」

 美月を含む全員がうさぎに視線を向ける。

「そうだ、うさぎ。お前はそのために村に寄った流れ巫女に金を払い、子を産ませたのだ」

 父の言葉にうさぎはずっと俯いていた顔を上げた。

 ――皆、禍々しい笑みを浮かべていた。
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