空模様に左右される君とされない私
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2年前、あの退散劇から数日後──
あの日も雨が降っていた。
「三村さん、」
東堂くんも、あの頃は私のことを苗字で呼んでいた。
「呼んだ?」
雨の日の憂鬱そうな東堂くんから話しかけられたことを意外に思いつつも、私は隣の席に座る東堂くんに顔を向けた。
国語が終わった直後の休み時間だったはず。
「さっきの発表聞いてて思ったけど、三村さんの声っていいね」
そんなこと生まれて初めて言われた。
「いいって?」
「平坦だからかなー」
私のしゃべりはどうも抑揚に乏しいらしい、ということは自分でも知っていた。ついでにいうと、だから感情が伝わりにくいようだ、ということも。
にも拘らず、『平坦』という言葉は、私の胸にグサッと刺さった。