離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜


 ――パーティーから、半年後の五月某吉日。
 ようやく、この日を迎えることができた。
 
 私は大きく空いたデコルテを柔らかなリバーレースの包む、王道のAラインのドレスを着ている。上品に裾が広がりシルクがふわふわと波打っている。
 これは何度も試着した上、体の小さな私でも上品なシルエットで着こなせることで、ふたりで選んだものだ。 
 それに合わせる形で、彼も迷った末、今日ばかりは白の着丈の長めなフロックコートを身にまとっている。
 ずっとスーツは黒以外を着たことがないからと迷っていたが、ステンドグラスの輝く大聖堂のなか、神父様の前で向かい合った彼は、涙が出そうなほど綺麗だった。
 場所は都内の外れにある、青い芝生の深緑が美しい式場。雑誌を見ながらピックアップし、シンプルで落ち着いたら空間を好む私たちは、ここを選んだ。
 
「そんなに泣いたら……赤くなるでしょう」

 ……“涙が出そうな”ではなかった。
 実はもう、出ている。大号泣だった。
 
 ヴェールをめくった智秋さんが苦笑しながら、指の背頬を拭う。
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