離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 待ちに待った、ハネムーン……!
 
 カナダ東部の玄関口でもあり、日本の留学生や学生なども多く暮らしているトロントへは直通便が出ている。

 時刻は現在十八時すぎ。日本を発ったのは十九時くらいだが、時差は日本のほうが十四時間ほど進んでいるから出発した日に到着したという形になっている。

 この慌ただしくも洗練されたような異国の空気は……とても好きだ。

 周囲を見渡すと、着ているボーダー柄のドルマンTシャツとフレアパンツの裾から東京よりも少しひんやりした空気が入り込む。

 この時期のトロントは比較的温暖だが、夜はまだ冷え込む。上着を持ってきてよかった。

「人が多いので、離れないように」

 返事をすると、黒のカラーシャツとベージュのテーパードパンツ姿の智秋さんが淡く微笑み、私の手とスーツケースを拾って慣れた仕草で先を進む。
 
 今日は、ここからすぐのトロントの中心地・ダウンタウンに予約しているラグジュアリーホテルに宿泊予定だ。夜景を楽しみながら優雅なコースディナーをとって早めに休むことになっている。

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