離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
「わぁ……トロントの街並みが、模型みたいに見えますね」
「あそこにナイアガラも見える」

 翌日、早起きした私たちはホテル内のオシャレなカフェで朝食を済ませたあと、まずは観光名所として知られているCNタワーにやってきた。
 私も智秋さんも訪れるのははじめてだ。

 最も高い位置にある展望フロアからは、トロントの街並みがおもちゃのフィギュアみたいに見える。智秋さんの整った指の先には一五〇キロ以上も離れた、ナイアガラの滝まで見える。

 日本とはまたスケールの違った景色に心が躍ってしまう。
 
「留学で二か月もいたのに、ここには来たことがなかったんですね」

 彼に尋ねられて頷く。

「私が滞在地したのはバンクーバーのほうだったのだので。それもレノックス家は商業地の外れのほうにあったので、観光地にはたまにレノックスおじさんが、家族と学生たちを連れて、案内してくれた時くらいですね……。勉強に必死で、遊んでる場合じゃなかったっていうのが。一番の理由ですけど」
 
 そこまで言って景色から智秋さんへと視線を上げた。
 
「智秋さんも、このエリアははじめてなんですよね?」
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