〜秘書室の悪魔とお見合いしたら〜after storyハネムーン編〜
 でも、今回のクリスからのカナダ旅行の提案を承諾したということは、なんだかんだ智秋さん自身もクリスのことが好きなのだと思う。


「そろそろ、いきましょうか」

 そんなふうにして、三十分程経過しコーヒーがなくなったころ、私のぶんのカップを持って智秋さんが席を立つ。

 夕食は、ここからタクシーで十分ほど移動した距離にある、金融街のリッチなカナダ料理店に行く予定だ。ロブスターやムール貝をふんだんに使った料理はエグゼィブでも好む人が多いから、リサーチを兼ねてしっかり堪能しなきゃ……!

 私も御礼を言って、ポシェットを首から下げ上着を持って準備する。
 
 だけど、そのとき。ふと視界に入ってきた。
 
 カフェの店先……ひとりの女性が困り果てたような顔をして、周囲をキョロキョロ見回していた。
 栗色のウエーブかかった長い髪に、パチクリした大きな瞳。レース調のカットソーとスカートといった見るからにお嬢様のような恰好をしていて、年頃は私よりの下の二十台前半くらいに見える。
 
 可愛らしい女性……困っているみたい……?
 
 なんだかほおっておけなくて、近づいて英語で声をかけてみた。
 
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