離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 ちょっと後ろ髪ひかれる思いだったけれども。

 
   ◇


「あの女性も明日、楽しめると良いんですけど……」 

 その夜のこと。
 ホテルに戻った私たちは、明日に備えて準備をしていた。明日はレノックスおじさんが、クルーズに連れて行ってくれる日だ。とてもワクワクする。

 ……でも、ふたりで仲良く準備をしていると、どうもさっきのことが気にかかってしまった。
  
「店内で困ってた、あの女性ですか……?」

 尋ねられて、こっくり頷いて胸の中にあった気持ちをおずおずと口にした。
 
「好きな人のプレゼントを探していたのに……っというかその人と結婚するかもしれないのに、とても淋しそうな顔をしているのが気にかかって」

 それは一体どういう状況なのだろうと考えた。彼女からは、ずっと一途に思っている気持ちが伝わってきたのに。それも向こうは不本意だなんて……どういう状況?
 
「…………」
「その人に会いに、異国にまで来たんです……相手のかたに気持ちが届けばいいのですが――」

 最後にそう呟くと、智秋さんが何も言わずに頭ポンと撫でてきた。
 
「智秋さん?」

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