〜秘書室の悪魔とお見合いしたら〜after storyハネムーン編〜
 よしよしと犬でも撫でるみたいに、洗ったばかりのフワフワの髪が何度も撫でつけられる。
 
「みんながあなたのような人なら、誰も悩まない世の中になるでしょうね」
 
 穏やかな口調と優しい温もりに褒められた気がして喜びかけたけれども、なんとなく違う気がして止めた。
 
「……それって、褒められてるんですかね?」

 智秋さんが苦笑したあと「一応ね」なんて言って続ける。

「あなたは、思ったまま言葉にしたり、困難な状況でも常に前に突き進む強さを持っているでしょう。あの女性がどんな方かはわかりませんが、どことなく自信無さげで思い悩むように見えたので」

 私にそんな力があるとは思っていないけれど、確かに、さっきの女性の口ぶりは、少し後ろ向きに聞こえた。

「……道を切り開く力は、大切でしょう」

 そう答えた智秋さんを見て、胸の奥が熱くなった。
 
「そうですね……」
 
 少なくとも私は、清水の舞台から飛び降りるような覚悟で挑んだ告白があったから、今があるのだと思っている。
 あの女性がどんな状況かはわからないが、彼女の幸運を祈りたいと思った。
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