離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 そして、クリスには六年ほど前、パーティーで初めてお互いの祖父を介して紹介された日に、恋に落ちたと教えてくれた。
 その頃のクリスは、パーティー仕様で整えられていたが、まだ重たい前髪と眼鏡が印象的で、今の面影はひとつと無かったという。
 でもパーティーで気分を悪くし、嘔吐してしまった高齢の女性に、優しく対応しているのが心に残ったそうだ。
 周囲が身を引くなから、率先して女性を介抱しゲストルームへ誘導する姿はとっても、紳士的で素敵だったとミアは嬉しそうに話してくれた。
 容姿とか、経営者という肩書ではない。彼の素晴らしい人柄に惹かれていったことを熱心に教えてくれた。
 だから、舞い込んだ縁談は、彼女にとってとても幸運だったそうだ。
 
「――でも、彼には、ずっと好きな人がいるみたいで、縁談の話しは薄れちゃって」

 相槌をうちつつも、内心息を詰まらせてしまった。智秋さんが、それとなく背中に触れるのを感じた。
 
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