離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
「好きな人がいるなら断られて同然だし、諦めなきゃと思った。でも――少し前にお祖父様が『ちょっと、LNOX社の事業を、見てきてはくれんか?』と声をかけてくれて……最後にプレゼントだけでも渡せたらと思ったの」
 
「気持ちを伝える勇気はないから……」と彼女は苦笑する。

 彼女のショルダーバッグからはリボンのついた青の包み紙が見える。きっと昨日購入したクリスへのプレゼントだろう。
 一途で素敵な恋だと思った。同行理由を笑顔で教えてくれるミアをみなから、私は彼女の切なる思いを感じて、胸が掴まれたように痛くなった。
 ミアにとって、祖父同士の合作は幸運の導きだった。でも彼女はここで終わりにしてしまうのだろうか。彼女の一途な恋を応援したい気持ちがむくむく湧いてきた。彼女の手を取って、ぎゅっと握った。
 
「――一歩踏み出したら、世界が変わるかもしれないよ……」

 ミアがそう呟いた私を見て、「え?」と目をパチクリとする。
  
「まだミアの気持ち、クリスは知らないんだよね?」
「それは、そうだけど……」
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