離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 水しぶきがすごいからね〜と言うクリスの手には、個包装されたレインコートがあった。
 智秋さんは自分の分をもぎ取ると、ベリっとクリスを自分から引き剥がす。

「ミアとサクラも友達になれたようで、よかったよ」
「クリスのおかげだよ」

 お礼を言って、渡されたレインコートを包装を解いて身に着ける。
 だけど、ポンチョから顔を出したときには、すでにクリスの姿はそこにはなかった。
 
 ――はやっ……

 船内の他の乗船客は、おじさんの招待客だろう。その人たちにもレインコートを着るよう促すクリスは、本社にいたときよりも、ずいぶんと逞しくなったように思えた。

「今日はホストなので、忙しそうですね」

 私の心のうちを代弁する智秋さんに、こっくり頷く。
 
 ミアは残念そうにクリスを視線で追っている。
 今日のために、おじさんもクリスも、前々から準備をして楽しみにしてくれているようだった。

 でもきっと、彼女は、ここで一緒に観光できると思っていただろう。それを思うと、少しだけ切なくなる。
  
「――私……なにか手伝うことはないか、聞いてきます」
 
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