離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 だけど、聞こえてきたのは、決意するような声だった。

「ミア」
「サクラの言うように、せっかく来たからには友達になりたい――……連絡先とか交換できたら、また……会えるかもしれないし」

 恋する女の子は強かった。
 ミアはそう決意すると、パタパタとポンチョをなびかせ、クリスの後を追っていった。

「うまくいくと、いいですね」
 
 小さく同意を求めると、腰に触れた手にひらに力が加わり、智秋さんが顔を寄せてくる。
 
「……クリスは桜さんのように自分の気持ちに敏感なくせに、他から向けられる気持ちには疎そうなので、あのくらい意気込みがなければ届かないでしょうね」

「……わ、私ですか……?」
 
 さり気なくからかわれている気がするが、確かに彼の言葉の節々には思い当たることがある。
 智秋さんに恋に落ちた瞬間は敏感に感じだったものの、クリスの気持ちにはホームステイの間ずっと同じ家で過ごしていたにもかかわらず、気づかなかった。
 そんな鈍感な自分を気恥ずかしく思っていた、そのときだった。
 
「わあ~」っと甲高い子供の声が近づいてきて、ドン! と足元で鈍い音がした。

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