離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 咄嗟に体が動いてしまったが、智秋さんは感情をあまり顔に出さないけれど、とても優しい人だ。普段子供との関わりがないとはいえ、そんな心配いらなかったようだ。
 むしろ、目線を合わせ優しい声色で心配する彼は、私の想像以上で、胸がきゅんとして痛かった。
 
 ――子供が生まれたら、あんな感じになるのかな……? とても優しくていいお父さんになりそうだと思った。

「あれ? 桜さん、あそこにいるのは――」

 なんて甘い妄想に至ったとき、智秋さんが肩を叩いて甲板の端を見るように促してくる。
 周囲は近づいてきたナイアガラの迫力に圧倒されている頃だった。
 なんだろうと思って視線を見ると、そこには、ついさっきクリスところへ向かったはずのミアが、悲しそうな顔で薄暗い海面をじっと見つめていた。
 
「ミア……どうしたの?」

 駆け寄って、顔を覗き込む。
 ミアはやってきた私たちを見てどうにか笑顔を浮かべたが、またすぐに悲しそうな顔をしてしまった。
 
「あぁ……サクラ……。私すごくタイミング悪かったみたいで」
「何かあったの……?」

 促すと、彼女はポツリポツリとあったことを話してくれた。
< 36 / 64 >

この作品をシェア

pagetop