離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 声を掛けようとしたとき、クリスにちょうど電話がかかってきてしまったらしい。
 終わってすぐに声を掛けられるようにミアは近くで待っていたようだが、聞こえて来た会話はどうやら自分のことだったと視線をふせる。
 
『グランパ……無理に決まってるだろう……。歳も離れて、地味で……受け入れられるわけないって――』

 難しい顔をしているのが見えて出直そうと背を向けたそのとき、そんなミアを拒むセリフが聞こえて来て、ミアは逃げるようにその場を去ってしまったらしい。
 
「それは――」
 
 電話の相手はきっと、安定のダニエル会長だろう。ふたりの進捗を聞いてきたに違いない。
 でも私が思うに、クリスは人のことをそんな風に、言ったりするとは思えなかった。
 内容はミアとのことだとしても〝歳〟や〝地味〟というのは、ミアに言ったわけではないと思うんだけど――
 
「やっぱり、無理があったのかもしれない」
 
 傷心する彼女を励ます言葉を、必死に探す。
 嘘はつきたくないし、安易なことを言うのも違うと思う。それでも自分にできることを考慮していると、ふと、隣から思わぬ声が上がった。
 
「……なら、諦めて帰国したほうがいいかもしれませんね」
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