離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 近づく水流音に消されることなく、ミアの熱烈な告白がデッキに響き渡った。
 周囲からものすごく視線を感じたが、私たちの意識は別のところにあった。

「えっと……」

 ミアの真後ろで、のっそりと動く大きな影。そして、恥ずかしそうな声が続いた。

「……これって……僕のこと……で、いいのかな……?」
「――⁉」
 
 頬を赤らめながら、おそるおそる尋ねてきたのはクリスだった。
 勢いよく振り返ったミアが、ボン! 鍋の沸騰するような音を立てて、真っ赤になった。

「ク、クリス……」

 隣の智秋さんの唇の端がゆるりと持ち上がる。

 智秋さんがミアを諭しだした辺りから、近づいてくるクリスが視界に入った。それを見てすぐに私は智秋さんの意図を察した。

 荒療治だけども、こういうことに疎そうで、それでもってまだ私への気持ちを断ち切って日が浅いクリスには、これが一番最適だと考えたのだろう。
 またミアも今日で最後と言っていたから、なおさらだ。

「さっき近くで待ってくれていたみたいだったから、僕に用事あるのかと思ってきてみたんだけど……えっと、なんて、言えばいいか……」

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