離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
「僕も、新しい一歩を踏み出したいと考えていたから……」

 今日彼女が一番願っていたことだった。
 クリスが手を差し出すと、ミアは息を呑んで口を押さえ呼吸を整えたあと、
 一歩踏み出して――その手をゆっくりそっと握った。
 
「ありがとう……クリス」

 二人が握手を交わし微笑み合ったところで、智秋さんが私の背中にそっと手を置いてその場を離れた。
 

「智秋さん……クリスが来てたの気づいてたんですね」
「さあ、どうでしょうね?」
 
 智秋さんは肩を竦めながらも、その綺麗なお顔はとっても悪い笑みを刻んでいる。もちろん、嬉しそうでもあるけれど。

 そうして促されるままデッキを歩いていると、突然船内アナウンスが流れた。

『強い水しぶきに注意してください』とのことだ。

 耳にした直後、自然のシャワーがザーッとボート全体に振りかかりはじめる。
 
「わあっ! ほんとにすごい水しぶきっ……!」
「ポイントに到着したみたいですね」

 智秋さんが即座に私にレインコートのフードを被せてくれる。
 
「チアキ、サクラ! 景色も見てくれよ~!」
 
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