離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
「……俺はさっきよりも過酷な状況下で、自分の気持ちをハッキリ伝えてきた人を知っていますよ」

 淀みなく届いた、静かな声。すぐに、彼がなにを言おうとしているのか予測できた。
 私を見つめる眼鏡の奥の眼はとても柔らかだが、さっきみたいにまた私をからかおうとしているのかもしれない。
 大自然に視線を留めたまま、いつものように返事をした。
 
「それは、果たして誰のことでしょうね……」
「……でも俺はそのおかげで、学びましたよ。思いは、人の心をも動かす可能性を持っているのだと」
 
 だけど、返ってきたのは思っていたものと全然違う答えだった。
 ……ゆっくりとナイアガラから智秋さんへと視線を移した。
 濡れた眼鏡の奥の優しい眼差しと、絡まった。
 そして、彼の目はさっきの答えを、語ったんだ。

 ――クリスの心も、自分(それ)と同じかもしれないでしょう?

 そうであって欲しいと思ったから、動いたのだと。
 
 嬉しくて、くすぐったくて、胸が熱くなって。
 考えるよりも、私も体が先に動いていたんだ。
 めいいっぱい背伸びをして、唇に唇を押し付けた。

 ――もう……っ。
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