離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
その後のふたり2
◆ その後のふたり2
……よっこいしょ、と。
クローゼットの前に、小さな脚立を持ってきて広げる。すると、たった今帰宅し着替えていたはずの彼が、すかさず横から現れて、私からそれを奪った。
「あ、あれ……?」
「だから、高い位置にあるものを取るときは声をかけてと言ったでしょう……」
最近ことあるごとに、こんなやりとりをしている気がする。
「……大丈夫ですよ。これに乗れば届く位置ですし、智秋さん、帰ったばかりなのに――」
なにせ、たった二段。私が小さいだけで、普通の人なら届く位置なのだ。
「いいから。いるときくらい俺を頼ってください」
智秋さんは困ったように微笑み、広げた脚立を使わずに、クローゼットの上のストック用のキッチンペーパーを軽々と取ってくれた。
ほんとうに、甲斐甲斐しい。
そして受け取ったあとは私を見て微笑み、それからまるで定められた動きのように、ここのところ丸々してきた私のおなかを撫でキッチンに向かおうとする。
――この様子、夕食も作ろうとしていない?
「ちょ、ちょっと、まってください~……!」