離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
 私が「おかえりなさい」といったあとに、キッパリそう断言すると、タオルドライしていた智秋さんは今度は諦めたように肩を竦める。
 
「あなたは、ほんとに……。目の前に本人がいる日くらい、見なくていいでしょう」

 智秋さんは呆れたように苦笑したあと、私からアルバムを取り上げ、うさぎのぬいぐるみいるサイドボードに移動してしまう。
 
「――で、ちゃんと準備はできてる?」
 
 それからゴロンと隣に寝そべり私の髪に触れてきた。視線は部屋の隅に送られる。

 ベッドの下方のそこには、赤と黒の大きなスーツケースが仲良く並んでいる。
 明日からの旅行に備え、私たちは随分と前から手の空いた時に準備をしていた。
 
「もちろん、ばっちりですよ。明日からが楽しみで、今夜は眠れなさそうです」
「大げさだな……でも――」

 万全の姿勢と意気込みを伝えると、ギシり……ベッドのきしむ音が耳に触れた。
 
 へ……?
 
「眠れないのは、大変ですね……」

 視界が暗くなり、うつ伏せだった背中に、僅かな重みと温かさが加わる。
 鼓動が一気に高鳴りはじめた。
 
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