離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
その後のふたり3
◇
――それから数年後。
桜の季節が過ぎ初夏が舞い降りた頃……
「パパ、芽依、とーまんちお泊まりいく」
「…………だめです」
あぁ、またやっている。
今日も今日とて、変わらない親子の姿。
私は見慣れたふたりのやりとりをキッチンから眺めながら、思わず笑みをこぼした。
「来美ちゃんも永斗くんも、おいでって言ってくれた! ダメっていうのパパだけだもん」
「…………それでもダメです」
「いーやーだ――!」
駄々こねながら地団駄を踏まれて、千秋さんの表情が目に見えて困っている。
――最近千秋さんが、ちょっと押され気味になってきている。
「芽依、そろそろお出かけの準備しよっか~」
見兼ねた私がすかさず話題を逸らすと、ころりとそれにつられた無邪気な天使が顔を上げる。
「あ、うん! するー!」
千秋さんがふぅ……と肩の力を抜いて、芽依はバタバタと子供部屋へと駆け込んでいく。