離縁前提の結婚ですが、冷徹上司に甘く不埒に愛でられています〜after storyハネムーン編〜
「早く眠れるように、今から少し疲労しましょうか……?」
 
 背後から注がれる、穏やかだけどどこか色気を滲ませた声。
 ドキっとして振り肩越しに返ると、ニヤリと悪い笑みを浮かべた智秋さんがいた。
 
 ……意味はちゃんと理解している。

 ここのところ、会食や出張などですれ違い、こうしてふたりで夜を過ごすのは久しぶりだ。私もいっぱい触れ合いたいとは、思っている。なんなら私から、飛びつきたい気分だ。
 しかし、明日からのことを考えると、それどころではないと思うのも確かなわけで……。
 
「準備出来てるんでしょう? 眠れないんでしょう?」

 スンスンと髪に鼻先が触れて何度も確認される。甘い吐息が零れそうになって、ピクンと肩が跳ねた。
 
「そ、そうですけど――」
「なら、久々に触れ合って眠った方が、睡眠の質もいいはずです」
 
 言葉を交わしているうちに、いつの間に仰向けにされた体がベッドに縫い付けられ、程よく体重をかけられる。
  
 言い切る意地悪な微笑をドキドキしながら見つめていると、やがて観念したように彼はふわっと目元を優しく緩めた。

「……触れないと、俺が眠れないから」

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