【改訂版】四国州
【迷走】
事件の翌朝9時過ぎであった。
南海道電力の本店があわただしくなった。
ストライキを起こした職員たちは、契約者からの問い合わせや契約解除の手続き業務などに追われた。
州内にある発電所と変電所の管理維持については、伊方原発以外は発電所がある各自治体やガス会社が管理運営を引き受けることが決まったので問題はなかった。
伊方原発は、運転再開のメドがたたなくなったのでハイロする方向でケントウを始めた。
東日本大震災による巨大津波で福島県の沿岸部にあった原発が深刻な事故を起こしたことを機に、日本全国にある原発が稼働を停止したところが出た。
伊方原発の立地である西四国市の反対派の住民グループが激しく抵抗している…
加えて、西四国市の市議会や州議会と中央省庁の間で深刻な対立が生じた。
それなのに、州知事はボウカンしていた。
州知事は、先行して道州制が導入された際に就任した元香川県知事である。
州知事が南海道電力の経営陣とグルになっていた…
その上に、関西のやくざ組織のナンバー2の男と交遊関係があった…。
そのまた上に、歴代の総理大臣だった男の家から献金《かね》をもらっていた…
…の悪いうわさが広まったので、行方不明になった末に不在となった。
このため、元高知県知事だった副知事が代行で州知事を務めていた。
州議会で、初代の知事の派閥の議院数人をリコールした。
これにより、伊方原発がハイロになることが確実な情勢になった。
そんな中であった。
田島組《たじま》で一番ワルのチンピラ・T原が、服役していた根室支庁《ねむろ》の刑務所を仮出所した。
仮出所後は、療養のために松山の州立ガンセンター(道州制が導入された後は国立から州立に移行された)へ移る予定である。
本部長の話によると、T原は脳幹部にコブシ大の腫瘍があったので手術が出来ない…ので終末医療を受けることになった。
南海道電力の副社長のひとり娘の安否が分からない中で、新たな事件が起こる危険性が生じた。
オレの気持ちは、ひどく動揺した。
それから数日後であった。
T原は、北海道警《どうけい》の刑事たち50人と一緒に刑務所を出たあと、護送車に乗って根室中標津空港へ向かった。
根室中標津空港から航空機を2回乗り継いで羽田経由で福岡空港まで行った。
その後、JR博多駅から山陽新幹線に乗って広島駅へ向かった。
広島宇品港から高速船に乗って松山観光港へ向かった。
松山観光港に到着したのは、夕方あたりだったと思う。
問題は松山観光港から州立ガンセンターまでの道中であった。
この時にサイアクな事件が発生する危険《リスク》をはらんでいた。
想定されるシナリオは2つある…
ひとつは、T原を奪還するために組の連中が護送車を襲撃する恐れがある…
もうひとつは、トイレ休憩で降りた場所でT原が脱走する…
…と言うことである。
サイアクのシナリオは、絶対にさけなければならない!!
話は戻って…
T原は、北海道警《どうけい》の刑事たちと一緒に護送車に乗って松山観光港を出発した。
護送車は、主要州道〜環状線〜旧国道を通って州立ガンセンターへ向かった。
しかし、旧国道に入った辺りからT原はひどくソワソワとした。
(カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
護送車は、いよてつ平井駅の近くにある踏み切りで停車していた。
この時であった。
T原は、刑事たちに『気分が悪くなった…吐きそう…』と言うた。
刑事たちは『もう少しだから辛抱しろ!!』とT原を怒鳴りつけた。
しかし、T原が『もれそう…』と言うた。
護送車は、いよてつ平井駅から400メートル先にあるガソリンスタンドで途中停車した。
T原は、ガソリンスタンドのトイレへ行った。
この時、オレが恐れていた事件が発生した。
「課長!!」
「ああ!!T原!!」
T原は、警備が手薄になっていたところを見てその場から逃走した。
T原が逃走したと言う知らせを聞いたオレとダンさんとオノさんは、急いで現場へ急行した。
逃走したT原は『やっと自由になれた…仲間たちの元へ帰りたい…』と言う一心で逃げ回った。
その時であった。
(キキキキキキキ!!ドスーン!!)
T原は、交差点から飛び出したグレーのトヨタアルファードにはねられた。
T原は、全身を激しく打ち付けてその場で亡くなった。
アルファードを運転していた男は、その場から逃走した。
オレとダンさんとオノさんがひき逃げ事故の現場に到着したのは、それから15分後であった。
現場には、置き去りにされたトヨタアルファードとT原の遺体が横たわっていた。
オレとダンさんとオノさんは、すぐに所轄の警察署に連絡して現場確保のお願いをした。
それから20分後であった。
所轄の警察署の警察官たちが事故現場に到着した。
その後、現場検証を始めた。
オレは、パソコンを開いて事故を起こしたアルファードの所有者の検索した。
ダンさんはオレに『車の所有者は分かりましたか?』と聞いた。
この時、T原をはねたトヨタアルファードの所有者が分かった。
所有者は、松山市愛媛区(松前町の部分)の建材店の経営者のひとり息子さんの名義であることが判明した。
「達雄さん。」
「もしかしたら…盗難車の疑いがあるかもしれない…」
「盗難車…」
「念のために、所有者の人に確認をとろう。」
ダンさんとオノさんは、大急ぎで愛媛区へ向かった。
ところ変わって、愛媛区にある建材店にて…
店内に入ったダンさんとオノさんは、経営者の男性にこう言うた。
「すみません…こちら、A沢建材でございますね。」
「そうですが…あなたたちは…」
「四国州警ですが…お宅のひとり息子さんの名義のトヨタアルファードが交通事故を起こしました…はねられた男性は刑務所で服役していたヤクザの男で、護送車から逃走したあとにはねられて亡くなりました…すみませんけれど、息子さんに会わせてくれまへんか?」
「刑事さん…うちの息子は…今…」
「いいわけしてもあかんで!!」
「ダンさん!!落ち着いて下さい!!」
オノさんは、ひどくコウフンしたダンさんを必死になだめた。
結局、アルファードの所有者が不在だったので詳しいことを調べることができなかった。
その頃であった。
オレは、事故が発生した交差点に設置されている防犯カメラの解析をしていた。
この時、T原をはねたアルファードを運転していた男が判明した。
オレは、急いで男の身元の割り出しを始めた。
この時、T原をはねた男が山口県警の生活安全課《セイアン》から捜索願いが出ていた無職の男であったことが判明した。
それを知ったオレは、大急ぎでダンさんとオノさんに連絡した。
ダンさんとオノさんは、T原をはねた男の捜索に入った。
事故発生の翌日であった。
ダンさんとオノさんとオレは、松山市内《しない》のあちらこちらを回って聞き込みをしていた。
しかし、発見につながる有力な手がかりが見つからなかった。
一体、あの男はどこへ行ったのだ…
一刻も早く、逮捕しないと…
手遅れになる…
オレの気持ちは、さらにあせった。
それから3日後であった。
T原をはねた男は、松山市東温東区(川内町の部分)の山奥に潜伏していたことが判明した。
しかし、男はスズメバチの大群に襲われて亡くなった…
…と言う結果で終わった。
南海道電力の本店があわただしくなった。
ストライキを起こした職員たちは、契約者からの問い合わせや契約解除の手続き業務などに追われた。
州内にある発電所と変電所の管理維持については、伊方原発以外は発電所がある各自治体やガス会社が管理運営を引き受けることが決まったので問題はなかった。
伊方原発は、運転再開のメドがたたなくなったのでハイロする方向でケントウを始めた。
東日本大震災による巨大津波で福島県の沿岸部にあった原発が深刻な事故を起こしたことを機に、日本全国にある原発が稼働を停止したところが出た。
伊方原発の立地である西四国市の反対派の住民グループが激しく抵抗している…
加えて、西四国市の市議会や州議会と中央省庁の間で深刻な対立が生じた。
それなのに、州知事はボウカンしていた。
州知事は、先行して道州制が導入された際に就任した元香川県知事である。
州知事が南海道電力の経営陣とグルになっていた…
その上に、関西のやくざ組織のナンバー2の男と交遊関係があった…。
そのまた上に、歴代の総理大臣だった男の家から献金《かね》をもらっていた…
…の悪いうわさが広まったので、行方不明になった末に不在となった。
このため、元高知県知事だった副知事が代行で州知事を務めていた。
州議会で、初代の知事の派閥の議院数人をリコールした。
これにより、伊方原発がハイロになることが確実な情勢になった。
そんな中であった。
田島組《たじま》で一番ワルのチンピラ・T原が、服役していた根室支庁《ねむろ》の刑務所を仮出所した。
仮出所後は、療養のために松山の州立ガンセンター(道州制が導入された後は国立から州立に移行された)へ移る予定である。
本部長の話によると、T原は脳幹部にコブシ大の腫瘍があったので手術が出来ない…ので終末医療を受けることになった。
南海道電力の副社長のひとり娘の安否が分からない中で、新たな事件が起こる危険性が生じた。
オレの気持ちは、ひどく動揺した。
それから数日後であった。
T原は、北海道警《どうけい》の刑事たち50人と一緒に刑務所を出たあと、護送車に乗って根室中標津空港へ向かった。
根室中標津空港から航空機を2回乗り継いで羽田経由で福岡空港まで行った。
その後、JR博多駅から山陽新幹線に乗って広島駅へ向かった。
広島宇品港から高速船に乗って松山観光港へ向かった。
松山観光港に到着したのは、夕方あたりだったと思う。
問題は松山観光港から州立ガンセンターまでの道中であった。
この時にサイアクな事件が発生する危険《リスク》をはらんでいた。
想定されるシナリオは2つある…
ひとつは、T原を奪還するために組の連中が護送車を襲撃する恐れがある…
もうひとつは、トイレ休憩で降りた場所でT原が脱走する…
…と言うことである。
サイアクのシナリオは、絶対にさけなければならない!!
話は戻って…
T原は、北海道警《どうけい》の刑事たちと一緒に護送車に乗って松山観光港を出発した。
護送車は、主要州道〜環状線〜旧国道を通って州立ガンセンターへ向かった。
しかし、旧国道に入った辺りからT原はひどくソワソワとした。
(カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
護送車は、いよてつ平井駅の近くにある踏み切りで停車していた。
この時であった。
T原は、刑事たちに『気分が悪くなった…吐きそう…』と言うた。
刑事たちは『もう少しだから辛抱しろ!!』とT原を怒鳴りつけた。
しかし、T原が『もれそう…』と言うた。
護送車は、いよてつ平井駅から400メートル先にあるガソリンスタンドで途中停車した。
T原は、ガソリンスタンドのトイレへ行った。
この時、オレが恐れていた事件が発生した。
「課長!!」
「ああ!!T原!!」
T原は、警備が手薄になっていたところを見てその場から逃走した。
T原が逃走したと言う知らせを聞いたオレとダンさんとオノさんは、急いで現場へ急行した。
逃走したT原は『やっと自由になれた…仲間たちの元へ帰りたい…』と言う一心で逃げ回った。
その時であった。
(キキキキキキキ!!ドスーン!!)
T原は、交差点から飛び出したグレーのトヨタアルファードにはねられた。
T原は、全身を激しく打ち付けてその場で亡くなった。
アルファードを運転していた男は、その場から逃走した。
オレとダンさんとオノさんがひき逃げ事故の現場に到着したのは、それから15分後であった。
現場には、置き去りにされたトヨタアルファードとT原の遺体が横たわっていた。
オレとダンさんとオノさんは、すぐに所轄の警察署に連絡して現場確保のお願いをした。
それから20分後であった。
所轄の警察署の警察官たちが事故現場に到着した。
その後、現場検証を始めた。
オレは、パソコンを開いて事故を起こしたアルファードの所有者の検索した。
ダンさんはオレに『車の所有者は分かりましたか?』と聞いた。
この時、T原をはねたトヨタアルファードの所有者が分かった。
所有者は、松山市愛媛区(松前町の部分)の建材店の経営者のひとり息子さんの名義であることが判明した。
「達雄さん。」
「もしかしたら…盗難車の疑いがあるかもしれない…」
「盗難車…」
「念のために、所有者の人に確認をとろう。」
ダンさんとオノさんは、大急ぎで愛媛区へ向かった。
ところ変わって、愛媛区にある建材店にて…
店内に入ったダンさんとオノさんは、経営者の男性にこう言うた。
「すみません…こちら、A沢建材でございますね。」
「そうですが…あなたたちは…」
「四国州警ですが…お宅のひとり息子さんの名義のトヨタアルファードが交通事故を起こしました…はねられた男性は刑務所で服役していたヤクザの男で、護送車から逃走したあとにはねられて亡くなりました…すみませんけれど、息子さんに会わせてくれまへんか?」
「刑事さん…うちの息子は…今…」
「いいわけしてもあかんで!!」
「ダンさん!!落ち着いて下さい!!」
オノさんは、ひどくコウフンしたダンさんを必死になだめた。
結局、アルファードの所有者が不在だったので詳しいことを調べることができなかった。
その頃であった。
オレは、事故が発生した交差点に設置されている防犯カメラの解析をしていた。
この時、T原をはねたアルファードを運転していた男が判明した。
オレは、急いで男の身元の割り出しを始めた。
この時、T原をはねた男が山口県警の生活安全課《セイアン》から捜索願いが出ていた無職の男であったことが判明した。
それを知ったオレは、大急ぎでダンさんとオノさんに連絡した。
ダンさんとオノさんは、T原をはねた男の捜索に入った。
事故発生の翌日であった。
ダンさんとオノさんとオレは、松山市内《しない》のあちらこちらを回って聞き込みをしていた。
しかし、発見につながる有力な手がかりが見つからなかった。
一体、あの男はどこへ行ったのだ…
一刻も早く、逮捕しないと…
手遅れになる…
オレの気持ちは、さらにあせった。
それから3日後であった。
T原をはねた男は、松山市東温東区(川内町の部分)の山奥に潜伏していたことが判明した。
しかし、男はスズメバチの大群に襲われて亡くなった…
…と言う結果で終わった。