俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい
「大地さん。大丈夫ですか? 見せてください」
「ああ。川口、悪い」
俺は切った指を見せた。
思ったよりは浅かったみたいだ。
良かった。
こんな凡ミス、いつぶりだろう。
「あの…余計なお世話だったらすみません。大地さん、何か悩み事でも?」
悩み事って…。
あるとすれば、美空と七海の事しかない。
その間も、川口はテキパキと止血をして消毒とカットバンを貼ってくれている。
「いや。大丈夫だ。戻るよ。手当てありがとな」
そう言って、すぐにまた接客に戻った。
川口もすぐ後ろについてきて、落ちたハサミを拾って下がっていった。
チラッとまた美空を見れば、まだ七海と楽しそうに練習をしていた。
なんだよ。
こっちは怪我までしたのに。
いやいや。違うだろ。
完全な、八つ当たりの感情をグッと抑えつけ平常心を装い、別なハサミでカットの続きを無心で進めた。