俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい
本当にやめてよー。
大地を不安にさせるような事言わないでよー。
心配して大地を見れば、すっかり自信を取り戻したのか堪えてない。
むしろ吹き出しそうになっているのをなんとか我慢しているようだ。
おい。
大地。
切り替えが早いんよ。
どうやら、瓶底メガネに地味な格好をして学生時代黙々と努力していた姿が、七海くんにはお淑やかな女性に映っていたらしい。
確かに真面目に努力はしてきたけれど、私の性格はもっとこう…ね。
ははは。
でもここで、本当は男まさりな性格で、口調もけして女性らしくないし、ズボラで家では塩辛をつまみに飲んだくれるような女だとカミングアウトしてしまったら、試験前の七海くんはどうなってしまうだろう。
タイミングが非常に悪い。
そして、下手にカミングアウトしてしまうと店での私もなんだか居心地が悪くなる。
困ったな。
「七海。まず、この話はここまでにしておこうか。店の前でするような話しじゃないだろ? お前も、試験前の大事な時期らしいじゃないか」
大地がなんとか誤魔化してくれた。
「それは…。は、はい。すみません、取り乱して」
七海くんもそれは伝わったようだ。
「あーうん。まず、試験までまだあるし今はそっちに集中しましょう。それじゃ、この辺で。」
私はそう言って、その場から逃げるように大地の車に乗り込んだ。