俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい


「フッは! もの静かでお淑やかだってよ、美空」

大地は車に乗るなり、もう爆笑している。

「はははは…」

私も、乾いた笑いしか出てこない。

「あいつ、やっぱりお前の事好きだったな。でも、お前の事なにもわかってねぇ。俺の前での美空を見たら白目向きそうだなアイツ」

「それ、どういう意味よ」

「どんな美空も俺は愛してるって意味」

大地は、先日とは打って変わって余裕の笑みを浮かべ私を熱い瞳で見つめる。

「私も、どんな大地でも愛してるよ」

大地は瞳を大きく開けて私を見た。
そして、はぁーとハンドルに両手をついて顔をかがめたあと顔だけ私に向けた。

「かわいい事言ってくれるよな。正直まだ妬くけど、お前も指導係として頑張ってるしな。バッサリ振るのは試験の後までとっとけ」

「え、でも」

「俺はもう大丈夫だから。相手が七海ってのは気にくわないけど、最後まで応援させてくれ」

眉を少し下げてそう言った。
ふふふ。
自分に言い聞かせてるねこれ。
それでも、応援すると言ってくれる大地の優しさに胸が暖かくなった。

「ありがとう。んじゃバッサリ振るのはとっておく。七海くん、指切り落としたら危ないもんね」

「本当にな。同じ美容師としては応援したい気持ちはあるからな」

大地のこういう考え方、尊敬する。

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