俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい
一旦掃除機のスイッチを切る。

「ねぇ。耳元で叫ばないでよ」

耳をさすりながら顔をしかめて見上げた。

「お前が掃除機かけてっからだろ。んで? お前は?」

「そうそう! ちょっと模様替えしたくてさ! ソファー動かすの手伝ってよ」

模様替えというか、配置を変えるだけだけど。

「何で俺がそんな事しなきゃなんねーんだよ」

「いーから! ほら! そっち持って! あらよっと!」

そう言って片方を持ち上げれば、文句を言いながらも大地はもう片方を持ってくれた。

「なんだよ、その掛け声。屁っ放り腰だしよ。もっと腰を入れろ腰を。んで? どっちに動かすんだよ」

「こっちこっち! そう! いい感じ!」

無事に移動できた。
ソファーを降ろして、何気なくもとあったソファーの床を見たその時、黒いなにかが目に入った。

「キャー! 虫⁈ ねぇ! 虫だよねあれ! ゴキ⁈」

私は大の虫嫌い。
思わず大地に飛びついた。
思いっきり抱っこだ。
そんな私を大地はガシッと抱き止めた。

「何おまえ。虫嫌いなの?」

もう私は半べそかきながら、大地に抱きついて顔をうずめたままコクコクと頷く事しか出来ない。
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