俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい
大地は、私を抱き抱えたまま近く。
「ちょっと! やめてー! 近づかないでー!」
「ここからじゃなんの虫か見えねぇだろ」
「ゴキ? ゴキだった? 本当無理ー!」
「美空。大丈夫だから。捕まっとけ」
そう言ってギャーギャー騒ぎながらガタガタ震えてしがみつく私の頭に手を添えてまた近づいた。
「美空。ありゃカメムシだ。ゴキじゃねぇ。ほれ、降りろ」
「んむ! 無理!」
「このままじゃ、捕まえれねぇだろ」
そ、それもそうか。
でも嫌だ。
ぎゅーっと抱きついた力を強める。
「わかったわかった。んじゃお前あっちで待ってろ」
大地はそのままリビングからでて、玄関の方まで連れ出した。
ここなら大丈夫そうだ。
そーっと大地から降りる。
「そこで待ってろ」
そう言って、大地は再びリビングに戻った。
耳を澄ましていればガラッと音がした。
どうやら、ベランダから逃したようだ。
「美空ー。もう大丈夫だぞ」
恐る恐るリビングに顔をだし、そーっと足を踏み入れた。
あ。いない。