俺様な彼は愛しい彼女を甘やかしたい
もう私は何事もなかったかのように、そのままドアを閉めた。
が、ガツンと音がしたと思えば大地がドアの隙間に足を入れて閉まるのを阻止していた。

「おい。閉めんなよ。お前、社会人にもなってそんな格好してんのかよ」

鼻で笑われる。

「どんな格好しようが別に大地に関係ないでしょ」

「顔くらい洗えよ。俺じゃなかったらどうすんだよ」

あきれた顔で見下ろしている。

「うっるさいな。うちに来るのなんて家族か宅配のおんちゃんくらいよ。休みの日なんだからいいでしょ別に。今起きたの!」


ボサボサの頭で、お腹に手を入れてぽりぽりかきながらあくびをひとつして大地を睨む。


「はぁ。まずいいや。てか、これ」

持っていた紙袋をズイッと押し付けられた。

「え?ちょっ、なに。てか、だから何でここにいんの?」

慌てて受け止める。


「引越しの挨拶だよ」


「はぁーー⁉︎」


「だから大声出すなっての。俺の部屋、隣り。じゃ、そういうことだから」
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