ガラスの季節のジュリアへ
 お客さんなんて呼ぼうものなら「お客じゃない。 患者さんだ!」ってものすごい顔で怒るんだよなあ。
「だってさあ、父ちゃん お医者さんじゃないじゃない。」 「いや、俺は医者だ。 立派な鍼医者だ。」 言い出すと何時間も止まらなくなるから分かったことにして話を終わらせる。 母ちゃんはこんな父ちゃんと何年も付き合ってきたんだねえ。
「だってお前たちを産ませてもらったんだからさあ、それだけは感謝しとかないといけないし、、、。」 「感謝しとかないとって何だよ?」
「あらやだ。 聞いて他の?」 「すぐ傍に居るんだから聞こえるわな。」
 「奥さんも大変ねえ。 こんな偏屈な旦那さんを持って。」 「そうねえ。 でもね、お父さんのおかげで私も長生きできるのよ。」
「そうかそうか。 お互いに憎まれ子は世にはばかる。ってわけか。」
「長下さんもひどいなあ。」 「そう? 本当のことやと思ったんだけど。」
 この人たちの会話を聞いていると褒めてるのか蹴落としてるのか分からなくなるから不思議。
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