乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
序
『・・・宮子ッッ!!』
いつもあたしを臼井って苗字で呼ぶ榊が、下の名前を叫んだ。見せたこともないような迫力で。
次の瞬間。あたしはものすごい衝撃といっしょに薙ぎ倒された。
力いっぱい榊に抱き竦められて、痛いより苦しくて、圧し潰されて苦しくて、苦しくて。
『榊ぃ・・・っっ』
息も絶え絶えだった。
何が起こったのかわかんなかった。
音がした。爆ぜたみたいな音が。
相澤さんの怖い声が聞こえた。
仁兄の大きい声が響いた。
榊は血だらけで、橘をあしらった桜色のあたしの着物も真っ赤で。
真とあたしの一生に一度だけの、結婚祝いの披露宴は一変して戦場になった。
数人がかりで運ばれてく榊を追いかけようとして、仁兄の腕の中で必死にもがいた。
真が絶叫した。
藤さんの顔が近づいた気もした。
ふっと意識が遠のいた。
リアルな夢を見てた。泣き叫んだ自分の悲鳴が耳の奥に残るくらいリアルな。
ぼんやり目が醒めて寝返りを打つと、あたしを見下ろしてたのは、ベッドの縁に腰かけた哲っちゃんだった。
「・・・宮子お嬢」
「あれ・・・?」
天井と壁の色目で、実家に残したままの自分の部屋なのはすぐわかった。なんでここで寝てたのか記憶が曖昧。頭の芯がちょっと気怠い。瞼が重たい。
「どこか痛むところはありませんか」
「?」
「気分は?」
大きな掌があたしの頭を優しく撫でる。これ好き、いい子いい子されるの。
「哲っちゃんがいてシアワセ?」
遠慮なく甘ったれてみた。
いつもあたしを臼井って苗字で呼ぶ榊が、下の名前を叫んだ。見せたこともないような迫力で。
次の瞬間。あたしはものすごい衝撃といっしょに薙ぎ倒された。
力いっぱい榊に抱き竦められて、痛いより苦しくて、圧し潰されて苦しくて、苦しくて。
『榊ぃ・・・っっ』
息も絶え絶えだった。
何が起こったのかわかんなかった。
音がした。爆ぜたみたいな音が。
相澤さんの怖い声が聞こえた。
仁兄の大きい声が響いた。
榊は血だらけで、橘をあしらった桜色のあたしの着物も真っ赤で。
真とあたしの一生に一度だけの、結婚祝いの披露宴は一変して戦場になった。
数人がかりで運ばれてく榊を追いかけようとして、仁兄の腕の中で必死にもがいた。
真が絶叫した。
藤さんの顔が近づいた気もした。
ふっと意識が遠のいた。
リアルな夢を見てた。泣き叫んだ自分の悲鳴が耳の奥に残るくらいリアルな。
ぼんやり目が醒めて寝返りを打つと、あたしを見下ろしてたのは、ベッドの縁に腰かけた哲っちゃんだった。
「・・・宮子お嬢」
「あれ・・・?」
天井と壁の色目で、実家に残したままの自分の部屋なのはすぐわかった。なんでここで寝てたのか記憶が曖昧。頭の芯がちょっと気怠い。瞼が重たい。
「どこか痛むところはありませんか」
「?」
「気分は?」
大きな掌があたしの頭を優しく撫でる。これ好き、いい子いい子されるの。
「哲っちゃんがいてシアワセ?」
遠慮なく甘ったれてみた。
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