乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
晩酌は、おじいちゃんの血圧に付き合って本数も控えめだったけど、お猪口を口に運ぶお父さんはいつになく饒舌だった。榊のことは真と同じように目をかけてたし、組長としても“親”としても人一倍、責任が重くのしかかってたと思う。

榊の無事をめいめいに喜んで。真の甘い笑い顔を見るのも、ほんとにいつぶりで。一緒にお風呂入って、寂しかった躰を飽きるまで埋め合った。

「俊哉だけどさ」

半身浴で、あたしを後ろから抱え込んだ真の顎が頭の上に乗る。

「面会はパスしてやって。代わりに誰か行かせる」

「え?でも」

あごに押さえられて振り向けない。

「自分で動けないカッコ悪いとこ、宮子に見られてんのヤだろ」

そっか。・・・やっぱりそういうもの?真も、脚のリハビリには一度もあたしを付き添わせなかったもんね。

「当分オレも顔出す気ないよ。俊哉ならゼッタイ復活するに決まってるし、待っててやりな」

「・・・そだね。ん、わかった」

励まし方ってきっと色々ある。あれこれお節介焼くとか、背中をバンバン叩くとか。

『待つ』は、相手を揺るぎなく信じなきゃできないこと。息するみたいに言える真を素直に尊敬する。

「宮子」

「なぁに?」

「ごめんな」

お腹の辺りに回された腕にきゅっと力がこもった。
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