乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「どれの『ごめん』?」

心当たりがふたつ、みっつ、よっつ。

「ぜんぶ」

「真のせいなの?」

「新婚旅行くらい連れてってやりたかったんだよ」

見えないけど辛そうに口惜しがってる。堪えてる。

そうだよね、理不尽だよね。これが極道の家に生まれついた運命。

あたしに引き金を引いた人間がいたのは事実で、現実で、榊の血があんなに流れた。逃れられないんだ・・・って、いい意味でも悪い意味でも、自分に選択肢のないあきらめがついた。のかもしれない。

「行きたかったよ、すっごく。旅行ならいつでも行けるって言われたら殴ったかも」

「・・・言わねーけど殴って」

「やだ。カオは命だもん」

わざと茶化した。

なにかを望んで失うくらいなら。真を守れるなら、榊を死なせずに済むなら。喜んで、哲っちゃんや仁兄があたしのために用意してくれる極上の鳥かごの中で、生きてく。引き換えに羽根を折る。

それをこの世でいちばん嫌ってるのは真だよね。傷つくよね、オレを信じてねーの?って。・・・でもね。

「新婚旅行の代わりは高くつくんだからねぇ。んー、『哲っちゃんと一日デート券』100枚つづり?『相澤さん一日貸し出し券』も捨てがたーいっ」

「うわー・・・宮子ちゃんエグイ・・・」

「じゃあ『どんなお願いでも必ず三つ叶える券』にしといてあげる」

「お願いされなくても叶える」

振り向かされて甘く盗まれた唇。
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