乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
自分の意思におかまいなく時間が一気に逆流する。

今日はあたしと真の結婚式で。あの世でも一緒になるって誓った、真を二度と泣かせないって誓った。大好きなみんなに祝福されて、大親友の紗江と大泣きして、ダンナさまに惚れ直して。

このさき何があったって、真と榊と三人三脚で乗り越えられないことなんてない。平気。もうね?ハチミツ味の幸せに(とろ)けながら、大往生する自信しかないんだから。

臼井家の次期当主、一ツ橋組本家の一人娘に生まれた宿命も、真っ向から受け止める覚悟を一から固め直した。ユキちゃんが言ってくれたとおり、ここからほんとの意味での人生が始まる。心底晴れやかだった。

一ツ橋組の身内が集まって門出を祝ってくれて、相変わらずオジサマ連中のにぎやかなお酒の席になって、それで。・・・それから?

わかんない。なにかの下敷きになったあたしを仁兄が。そしたら榊が。動かなくて、みんな真っ赤で、真が『絶対死なせねぇから!!』ってすごい剣幕で。

瞬間。ショートした記憶回路が火花を散らし、高速再生した。

『・・・榊っっ、ダメッ、死んじゃダメっっ、あんたがいなかったら、あたしはどうすんの・・・っっ』

『許さないからねっ、勝手に死んだら絶対に許さないからっっ榊!!』

『やだぁっ・・・ちゃんとあたしを見てよぉっ。怒ってもいいから、ずっとあたしの傍にいてよぉっっ』

泣いてた。涙が流れ落ちてるのも知らないで泣いてた。

あたしをかばって榊が撃たれた。

あたしをかばって。

今度は榊が。
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