乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
夜の七時半を回ったころ実家の広間に全員そろい、真がグラスをかかげる。

「宮子の26回目の誕生日にカンパーイ!」

特上寿司を囲んで、おばあちゃんと瑤子ママの十八番料理で埋め尽くされた座卓の上。あたしの手もあちこち伸びる。

「花爛も倉科もおいしいけど、やっぱりオウチごはんが一番だよねぇ~」

「あとで宮子ちゃんの大好きなケーキもあるのよ?」

「別腹でもたいがいにしとけ宮子。ハタチの小娘とは違うぞ」

にこやかなママに意地悪をかぶせる仁兄。

「ダイエットは明日からだっけ?」

隣のダンナさまがあたしの脇腹をつまんで、甘めに笑う。

「うー。運動不足な自覚はあるってばぁ!」

「いずれ子供を産む大事な体ですよ。自分のことは自分でしっかりなさい宮子」

おばあちゃんの穏やかだけど強かな一言に、真と目を見交わした。

ちょうど結婚式のあたりが生理不順で、もしかしたらって思った。遅れてただけで残念だったけど、ふたりで真面目に妊活を意識し始めてる。

真の脚に負担はかけたくない。どうしても自然の妊娠が叶わないならほかの方法を頼る。普通よりも色んなタイムリミットがある。わかってる。

「大丈夫。ちゃんと考えてるから」

真っ直ぐ答えた。

今は心から思ってる。

お父さんや哲っちゃんが積み上げてきたものを守るため、真が貫きたいものを守るため、みんなで生きてく場所を守るために、ここを失くしたくない。血を繋ぎたい、・・・って。
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