乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
締めくくりに、おじいちゃんとおばあちゃんから藍染めの反物、哲っちゃんとママからは欲しかったハンドマッサージャー、お父さんからのお祝儀袋をありがたく受け取った。「オレと仁兄のは誕生会までのお楽しみ」って種明かしがオマケにくっついて。

心のこもった花の贈り物や、みんなの深い愛情に掬い上げてもらった。すごく幸せな一日だった。でも甘やかしてもらうばっかりなのは今日でお終いにする。

あの襲撃が、臼井家の当主として将来あたしが受け継ぐもの、役目、責任に本気で向き合うきっかけになった。・・・そう思うことにする。

色んな余韻に浸りながら哲っちゃんちに帰り、飲み足りなかったらしい仁兄をリビングに残して、離れの部屋へ引き上げた。

「お風呂はいるー?」

「んーちょっと待って」

壁際の長ソファで寝転がって、あたしを手招く澄まし顔。

「俊哉」

差し出されたスマホに一瞬『?』。

「榊?!」

『・・・でかい声出すな』

スピーカーで聞こえてきた素っ気ない言い草が久しぶりすぎて、鼻の奥がつんとなった。

病院はとっくに消灯時間すぎてる。真の足元にお尻を落とすと、トーンを下げて掌のスマホ相手にお説教。

「もう寝てる時間じゃないの?夜更かしなんかして、退院延びちゃうからね?」

あたしも素直じゃない。
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